「お兄ちゃん」
「…だからその呼び名ヤメロって」
「チョコレート」
「おおっ!!待ってました!」
不機嫌そうな顔が一瞬にしてにこにこ笑顔に変化した。
ほんと極端だよね、浜田って。
あ、お兄ちゃんっていうのは浜田のあだ名です。呼んでるのはあたしと、時々田島。
だって年齢的にも内面的にもすごく兄貴っぽい。でもね、浜田は気に入らないらしいんだよ。
「ほしいですかー?」
「ほしいです!」
「じゃあお兄ちゃんって言っても文句言わない?」
「………えー」
「あ、こら、なんだその顔」
「チョコくれよー」
「…さっきの言葉聞いてた?」
がしがしと頭をかく浜田にあたしは一層笑みを深める。
浜田をいじるのは楽しいんだ、部活よりも友達とのお喋りよりも!
あたしの不敵な微笑みに気づいた浜田がじとっとこちらを睨んだ。
「なに笑ってんだよ」
「別にー?」
「…お兄ちゃん、ってのは許し難い」
「えー!」
「だって…なんか……なあ?」
「なに?」
「名前で呼べ、名前で!」
「(名前?)……よしろう?」
「…!」
首を傾げてそう言うあたしに、浜田がかああっと赤くなった。
え、マジで赤いよ。赤って表現がぴったりなくらい。
あたしは浜田の顔を下から覗き込むように見て、声を掛けた。
「なによー。呼べって言ったから呼んだのに」
「……おまっ、」
「ねえ、顔赤いよ?」
「うううるさいっ」
「あっ、」
そう言って浜田はあたしの持っていたチョコの包みを奪い取った。
不意打ち攻撃に呆気にとられたあたしは数秒停止し、その後浜田の持っている包みを見上げた。
つもりが、既に包みは開けられていて、昨晩作ったチョコは浜田の口の中。
「ちょっと!」
「いーか!」
「な、なによ」
「そーゆーことをやると、お兄さん意識するからヤメなさい!」
「……はあ?」
「…うん……やっぱ、お兄ちゃんでいいデスよ」
「え?あ、そう?」
(アイツに名前呼ばれるよりはお兄ちゃんって呼ばれたほうがいい!胸が張り裂けそうだもんよ)
「あ、田島、チョコいる?」
「いるー!!!」
「泉ちゃんは?」
「もらう」
「れんれんはー?」
「い、る!」
「( ア イ ツ め … ! )」
「うわー!なんか浜田がすごい怖い顔で睨んでるー!」
(ぶっちゃけお兄ちゃんのだけ手作りなんだけどね。気づいてないのかな、あのバカ)
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ありがとうございました。
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