九龍SS-part1-

 捨てられない男、というならそれは間違いなくあの人−夜な夜な墓地に潜っては化人
(ケヒト)から怪しげなアイテムをゲットして、ほくほくと部屋にためこむ一つ上の先輩−
葉佩九龍(はばきくろう)のことであろう、と夷澤(いざわ)は思う。
 今日も今日とて、百科事典を制服の下に着込み、料理の得意なバディ二人を連れて
墓に潜っていった。曰く、「今日は料理部の日」だそうだが、ここ天香(かみよし)學園に
はそんな部活は存在しなかったはずだ。しかも連れて行った二人というのがデジタル部
の肥後はともかく、學園の生徒ですらない舞草とあれば考慮するにも値しない。
 化人由来の食材と、明らかに學園の備品と思われる文房具や教材、果ては何に使う
のか分からないガラクタまであの人は何でも同列に溜め込む。更には好意からであろう
が、仲間が彼に贈った妙なコレクションも日に日に数を増やす一方だ。
 「奈々子ちゃんのピザで敵をやっつけて、牡丹鍋を作ってやる」と、鞭を右手に嬉々と
して遺跡に向かっていく後ろ姿を思い出す。ということは、今日のターゲットは雄結(おこ
ろび)か。料理から食材を連想できる自分の順応力に半ば呆れ、舞草の武器は肥後が
バディなら半分以上使い物にはならないだろう、とバディの組み合わせからリアルに戦
況まで思い描けてしまう自分にいっそ潔く言い訳を諦める。
 これは順応どころではない。染まりきっている。
 今日の活動が「料理部」ならば自分が呼ばれることはないだろう。微睡みの中、明日
あの人に会ったときの第一声を考える。
 「味見くらいはしてあげてもいいっすよ、センパイ?」
fin.

+++

突発「九龍」SSでした。これを読んだ人の10割が理解できないであろう、需要0%のSSなんて書いてしまってごめんなさい!
いつかやりたかった、「九龍リチャ」全サのカレンダーネタ。遺跡編1・2月より。
語り手が夷澤なのは完全に趣味です!(言い切った!)
part1としていますが、続きがあるかどうかは全く未定。
リアクションしにくいと思うので、スルーして下さってよくってよ?(じゃあ書くな)



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