悪趣味(榎益+和)


 榎木津さんの寝顔は意外と汚い。
 豪快に口を開けて寝るし、時々瞼がぴくぴく動いて白目が覗くし、寝相だって、性格の通り豪快だ。
 今日もソファの上に寝そべる榎木津さんの寝方は、相変わらず汚い。
 それをいつも和寅さんは嘆く。
 「折角綺麗な顔をしているのだから、寝方も綺麗でいてほしいもんですぜ。
  ねぇ?益田君」
 同意を求められて、僕は言葉に詰まる。
 和寅さんは、当たり前のように僕に同意を求めているけど、僕は、
 「・・・・・・僕ァこっちの寝相の方が、良いと思いますけどねェ・・・」
 なんて思っているから。
 「えぇ?益田君、正気ですかぃ?これですぜ、これ」
 和寅さんは榎木津さんが寝ているのをいいことに、主人を「これ」扱いした上に、指さしながら顔を顰めて僕を見る。
 榎木津さんにばれたら、知りませんよ。
 「えぇ、まぁ、なんていうか・・・ほら、榎木津さんは普段あんまりにも綺麗な顔立ちをしているから、寝ているときぐらい少々汚い方が、愛嬌があっていいじゃないですか。親しみやすいし、それに、」
 言い訳のようにべらべら言葉を連ねて、いつもの上滑りする喋り方が出てくる。
 あ、不味い。何だか、余計なことを言ってしまいそうだ。
 和寅さんのじっと見てくる視線に、余計に焦って、ついするりとその一言は滑り落ちた。
 「―――か、可愛いじゃないですか!」
 あ、と思ったときには口から言葉は零れ落ちていた。
 時すでに遅く、ぽかん、と口を開けて見つめてくる和寅さんの視線に、いたたまれなくなって俯く。
 妙な沈黙、嗚呼、嫌だなぁこの感じ。
 「・・・・・・益田君、」
 「・・・・・・・・・・・・はい」
 「・・・君、趣味悪いですぜ」


 
 わ、解ってますよ!



ギャップに萌えた益田。




拍手、ありがとうございました!
益田は普段とは違う榎木津さんにときめいたらいいなと。






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あと1000文字。