web拍手御礼SS NO.1 焼餅?? 「・・・おい」 「なに?」 毎夜の日課― 比古の隣で今日の出来事を酌をしながら話す紫貴はいきなり話の腰を折られてちょっと不機嫌になった。 「一緒に歩いていた奴は誰だ?」 一緒に歩いていた奴・・・?? 比古が何を言っているのか一瞬わからなかったがあぁ、と思い出す。 「・・・あぁ。吉兵衛さんの事?」 「・・・。」 「今日町で一緒に歩いてた人の事を言ってるんでしょ?あなた町に降りたの?言ってくれれば良かったのに・・・。あ、そうそう。んで、一緒に歩いてた人は八百屋の息子の吉兵衛さん。確かあたしより2つ年上だったと思うわ。今日は大根買いに町に降りたら丁度吉兵衛さんが神社に詣でるところだったからついて行ってみたのよ」 「なんでそこで奴について行く」 なんでそこであんたが怒るの?ってツッコミ入れてやりたかったが、そういう雰囲気ではない。 「なんで・・・て、あたし寺社詣りってしたことないから」 「あまりよく知らない男の後をついて行くな」 「なんでよ」 いつも行く八百屋の息子なのだから「よく知らない」わけではないのだが。 比古は猪口の酒を飲み干す。 「言うことを聞け」 「・・・はい」 わけがわからないまま頷いてしまった。 「ふん・・・」 比古は町で紫貴と見知らぬ男が肩を並べて歩いているところを見た。 ちらっと見ただけでも分かったのだ。 ―男は紫貴に惚れている 紫貴を見る目がそう言っている。 当の紫貴は男の秘めたる想いに気づいていない様子であるようだが。 「ねぇ、焼餅でも焼いてるわけ??」 紫貴は面白半分に言って猪口に酒を注ぐ。 「もう寝ろ」 比古はもうなにも話す気にならなかった。 それを察したのか、紫貴は持っていた徳利を静かに置いて立ち上がった。 「そのうち一緒にデートでもしようね」 「・・・。」 そのまま布団に入ってしまったので比古は聞きそびれてしまった。 「でーと?なんだそれは」 ☆後記☆ こんなのがあったらいいなぁ〜。 というわけで焼餅な師匠。 なんとなくだけど、時期は短編「湯呑み」辺りかなぁ。 2006.09.15 |
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