かくれんぼ


一人の少年が柱に顔をうずめて数を数えている。


「もーいーかーい!」


十秒数え終えた少年が、大きな声で叫ぶ。


「「まーだだよー!!」」


すると、どこからともなく返事が返ってきた。

少年は柱に顔をうずめたまま、もう一度、ゆっくりと十秒数える。



「もーいーかーい!!」


少年がもう一度呼びかける。


「「もーいーよー!!」」


今度の返事は始まりの合図。

少年は柱から離れると、周りをぱっと見渡した。


「よっしゃ、ぜったい見つけるぞ!」


部屋から飛び出した少年は、居間を通り抜けて自分達の部屋がある二階へと駆け上がった。

自分と末っ子が使っている部屋に入り、ベッドの下、クローゼット、棚の陰などを探すが誰も居ない。

今度は隣の次男の部屋へ行く。

漫画が散乱しているその部屋は、ベッドの下以外に隠れられそうな場所はない。

漫画を踏まないように歩きながらベッドの下を確認するが、誰も居ない。

その時、少年の目に微かに開いた窓が目に入った。


「もしかして!」


少年は窓を大きく開き、そこから半身を大きく乗り出す。

すると、屋根の上のほうに、足が見えた。


「ビンゴ!!」


少年はスルリと窓から飛び出ると、軽々と屋根伝いに上っていく。


「ヨンイル見っけ!!」


屋根の上で寝転んでいた別の少年は、その少年の登場にガッカリしたように肩を落とした。


「あーあ。せっかくええ隠れ場所や思うたんに、こんなはよ見つかってまうなんて。」

「詰めが甘いぜ、ヨンイル。」


一人目を見つけて満足そうな少年は、早速二人目を探すために家の中へと戻る。


「ロンロンどこやろな?」

「わかるぜ、俺。」

「マジ?どこや?」

「こっちこっち。」


一回に降りた二人は、足音を立てないように静かに歩きながら父と母の寝室に向かった。

静かにドアを開けると、素早く中に入り込む。


「ふーん、なるほどなー。」

「ロンは母さんの部屋にしか隠れねーんだぜ。知らなかったか?」

「ああ、知らへんかったわ。」


二人は、真ん中がポコンと膨らんだベッドに歩み寄った。


「「せーの!!」」


両側から一気に布団を剥ぎ取ると、そこには静かな寝息を立てている男の子が居た。

身を守る小動物のように身体を丸めて膝を抱きこんでいる男の子に、二人は顔を見合わせて笑った。


「どうやら疲れて寝ちまったようだな。」

「おかんの匂いに安心でもしたんやろ。」

「かもな。あーあ、俺も眠ぃや。」

「俺もや。昼寝でもすっか。」

「おう。」


男の子を挟んだ両側に入り込み、しっかりと布団を被る。

遊び疲れた少年達は、幸せそうな顔で眠りについた。











幼いころの三人の話。

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