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毎日の糧。創作の糧です。

ssではありますが、御礼に代えて。

現在はアサスザとスザナナとの2パターンです。













ss01 アサすざ(25話後)















墓の前にたたずんでいる間はまだよかった。

どこまでも追えないあいつの匂いを探して歩き回ることもなかったし、まるでニンゲンのものとは思えない硬質な音声に背筋をそばだたせることもなかった。黒い仮面をかぶるあいつは、ふわふわと柔らかい音だけそのままにして変に合成された音を伴ってしゃべるのだ。不快である前に不愉快だった。もどかしい。あいつはあいつのままでいるくせに、どうして私からそうも隠れようとするのか。抗議の意味でつめをたててやったら、やたらと厚い黒皮の手袋にやすやすと阻まれた。





「アーサー」

気持ちのよい草原の木陰でごろごろとねころんでいたところに濃い影がさして、私は目を細めて開ける。
入り組んだ細道をぬってたどり着くここには人影など皆無。見上げたあいつは幾月ぶりか、黒の衣装をすべて取り払っていた。

「アーサー、こんなところにいた」

昔のような甘ったるい声が一瞬だけ嬉しくて、それからそんなことにやすやすと喜んでしまった自分に若干憮然とする。私の頭をなでてくるその手はだけれどもやっぱり昔と同じように暖かくて心地よくて、少しだけ素直になって目を細める。



「アーサー。本当に、セシルさんのところとか、ナナリーのところとか、アッシュフォード学園とか。ほかのところにいってもいいんだよ」

ポツリポツリと喋りはじめるあいつを見もせずに、私はパタリと尻尾を動かす。無駄な話だ。それだけで通じるあいつは苦笑して、それからありがとうとつぶやく。

「僕のところになんかいたら、どこまでつき合わされるかわかったものじゃないのに」

「にゃー」

「そう思って迎えにいかなかったら、ずうっとお墓の前にたってるし」

欠伸。

「アーサー。化け猫になっちゃっても知らないよ?」

いい加減、うるさい。

じゃれてくる右手につめをたてて、勢い噛み付いてやれば、心底痛そうに、けれど嬉しそうに「いたい」と奴は悲鳴をあげる。







だってそんなこと、私はとうの昔に決断しているんだぞ。





長い間生きた猫は、しまいには尻尾が二つにさけて、化け物になってしまうそうだな?

自慢のこの尾が二つに分かれるのはなんとも格好がわるい。が、この際仕方がないじゃないか。

いいか?お前は、寂しがりで甘えん坊でどうしようもない泣き虫のくせに、独りでいることしかできない不器用な子分だ。







なあ。

そんなお前を一人になんかできないから

いっそのこと化け猫になるまでつきあってやろうかと思っているのだ。
















だって、ほうってなんかおけないだろう












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