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最終回後妄想そのさん
ナナリーと。
ずるい、と思いました。
不謹慎であるとは分かっています。
でも思わずにはいれないのです。
だから言います。ずるいです、と。
面と向かって言うと、微かに困った気配がした。
何年もずっと視界が遮られていたのだ。
今更突然感じ取れなくなることは、ない。そのうち視力に頼り、退化してしまうだろうけれど。ナナリー自身そう簡単にさせるつもりはない。
慣れ親しんだ気配の動き。
「それ」がいくら別のものだと言い張ったとしても、ナナリーにとっては変わってなどいない。ただ少し、硬くなってはいるけれども。
今開かれた視界に映るものこそが、最初からナナリーの景色。
彼女は出会ってから初めて彼を見たのだ。
だから彼は元々仮面を被っていた、そう思うことだってできる。
正直に言えば、ナナリーの中で彼を彼たらしめていたのは、今は手袋に包まれた温かい手と、機械を通してしまった声だけで。
スザクさんはそんな仮面をつけていたのですね、と言いたかった。言えてしまえたら。
「ナナリー様?」
「……」
不躾に告げ、黙り込んでしまったナナリーに、彼は控えめに名を呼んだ。
少し前までは呼び捨てで呼んでしまい、その度に同僚にからかわれていたことを唐突に思い出す。
あの頃の方が、余程今より主従がはっきりしていたのに。
ナナリー、と優しく甘く呼ばれることはないとはっきりと痛感した。
『スザクさん』はお兄様と一緒に逝ってしまわれたのですね、と。
話して欲しかった。
特別扱いなんていらない。
どうして2人きりの世界で閉じてしまうのか。
だからナナリーはダモクレスの鍵に手を出した。
綺麗なままでしかできないことがあり、それを求められていたことは知っていた。
同時に、綺麗なままでは決して入れない領域があることを嫌という程思い知らされていた。
なら、向こうが来ないのであれば、こちらから行くまで。
ナナリーにとってルルーシュが全てだった。
同時にスザクが特別だった。
後悔はない、ただ、手を血に染めた自分がのうのうと過ごしているのが居堪まれないだけで。
これも1つの罰だと、思う。
ナナリーが彼らの真意を知ってしまうことは、多分ルルーシュの本意ではなかった。
けれど、ゼロとなった目の前の人物はそれがまるで当然というかのようにナナリーに接する。
「泣きながら募ったら、仮面を外して下さいますか?」
「…仮面の内側に意味はありません」
「……」
「仮に外したとしても、現れるものはナナリー様の望むものに成り得ません」
無駄と分かっていても問い掛けずにはいれなかった思い。
生真面目な彼のこと、返答は予想の範疇だったが、あるいは、と願わずにはいれなくて。
ぎゅっと腿のあたりのスカートを握る。
どうして、こう。
大切な人たちはこうも頑ななのだろう。
ナナリーは目を伏せた。
取り戻した明日は、私にとって優しい世界ではなかった。
暗い世界で昨日の面影を見ていたかった。
こんな明日は要らなかった。
お兄様が遺した世界でさえなければ…
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