キスの熱量 しっとりと汗ばんだうなじに這う濡れた感触に、ザワリと背筋を寒気に似た熱が這い登る。 「……っん」 堪えきれず漏れる小さな声に気を良くしたのか、熱く湿ったそれはうなじから耳の裏までねっとりと移動する。 ちぅ、と耳の裏側に吸い付かれて、鋭敏になった感覚は堪えきれない快感として脳髄に伝える。 「んぁっ……、ゃ、か、ずまく……っ!」 ビクビクと、愛撫を施すたびに従順な反応を返す体と、それによる羞恥から素直でない言葉を漏らす愛しい相手。 訴えるように名を呼ばれた佳主馬は、吐息のみで笑って組み敷いた体を掌でそろりと撫で上げる。 「健二さん……、きもち、いい?」 佳主馬が胸の突起を指先で捏ねるように押しつぶしながら耳元で囁けば、その刺激に体をびくっと慄かせて健二の唇からは堪えきれない嬌声が漏れる。 女性のそれとは違う低く掠れたその声は、他のどんなものよりも佳主馬を昂ぶらせる。 「も……っ、ゃあ……! 取れちゃう…っ!」 先ほどから執拗に摘んでは擦るそこが、そのうち取れてしまうのではないかと不安になる健二の発想が妙に面白くて佳主馬は低く笑う。 「大丈夫、取れないよ。というか、ぷっくりして……おいしそう」 性感帯として開発された健二の乳首は、生物的反射と言うべきなのか以前よりもふっくらとしていて弄られて赤く色づいた様子は良く熟れた木の実を彷彿とさせた。 誘われるままにその赤い木の実に佳主馬がぱくりと食いつき舌先で転がし吸い上げると、堪らなかったのか健二が頤を上げて一際大きな鳴き声を上げる。 「ひっ! んあぁ!」 跳ねる体は、どんどん熱を増しているようで生理的な涙を浮かべてトロンとした視線を向ける健二に、佳主馬はますます煽られる。 「健二さん、可愛い……。ねえ、全身にキスしたい」 いい? と問われて、快感にぼやけた思考でも佳主馬がどこにキスをしようとしているか理解できたけれど。 理性の溶けかけた健二は、既に羞恥よりも快楽を求める気持ちのほうが勝ってしまっていて、期待に満ちた淫猥な色を浮かべた瞳でコクリと頷く。 「……ん、して……? いっぱい、キス……して、かずまくん」 乾いた唇をチロリと舐める舌先が、酷く淫靡で。 佳主馬は真っ先に健二の唇にキスを落とす。 「んぅ…ん、ぁ」 思う様唇を貪り舌を絡めて健二の味を堪能してから、宣言通りに佳主馬は愛しい恋人の全身にキスを降らせ始めた。 ちゅ、ちゅ……と体にキスされるたびに、健二の体は跳ねて唇から甘い悲鳴が漏れる。 「あ…はぁ。ん、あ……あつ、い」 うわ言のように囁きながら、そこが気持ちいいとか、もっとしてなどと従順に体を開いて強請る健二に、佳主馬の方が夢中になってしまう。 まるでキスするごとに体温が1度上がっていくような感覚に、目眩すら感じる。 「健二さん……けんじさん……。好きだよ、愛してる……」 まるで頑是無い子供が縋りつくように必死に己を求めてくる佳主馬に、健二はひっそりと笑いながら応えるように抱きしめる。 「もっと……。もっと熱くして…? かずまくん、愛してるから」 だから、安心して貪って。と言外に告げて、一番顕著に熱を表している佳主馬のそこに手を伸ばし指を絡めた。 |
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