拍手ありがとうございました!





以下、太一×克哉SSです







「克哉さんてさ、きれいな手してるよね」
「え、そう?」
「うん。なーんかさ、オトナって感じの。んで、俺の手はガキっぽいの」
「それは太一の気のせいだよ。どっちも同じようなものだろ」
全然違う。そう言い返そうとしたけれど、延々と押し問答になりそうな気がして、寸でのところで太一は言葉を飲み込んだ。代わりに、じぃっと克哉を穴が開くほど見つめるが、この上なく癒し系の恋人はにこにこと花のような笑みを浮かべるばかりだ。それなりにいい歳をした成人男性に、花のような、などという表現はどうかという感じだが、克哉の笑顔をたとえるなら間違いなくこれだと太一は思っている。その笑顔に太一がどれだけ救われているかということも、おそらく克哉本人はまるで分かっていないのだろう。
(そういうのも克哉さんの魅力なんだけどね)
ひとり苦笑を浮かべると、克哉がぽかんとした表情で「太一?」と首を傾げてくる。その姿にますます笑み崩れて、衝動の湧き上がるままに、克哉の手をとった。
「ちょ…、太一っ」
「んー?」
急にあわて始める克哉を無視して、手の甲にキスを落とす。
「やっぱきれいな手だね」
「くすぐったい、よ…」
「ちょっとだけ、ね?」
付け根から関節を経て指先へ至るまでが、男性にしてはしなやかな形ですらりと伸びている。昔、子どもの頃に大人は同じような手の形をしていると思ったものだが、克哉の手はまさしく大人のそれだと太一は思う。そうやってほんの些細なことにすら、自分と彼との距離を見つけてしまう。
そして、それは手に限った話ではなかった。一緒に生活をするようになって実感したことだが、やはり克哉は考え方が太一よりずっとスマートだ。そう口にするたびに否定してくるのは克哉の性分ゆえで、太一にとってはやはり克哉は大人だった。たった4歳の差。けれど、それまでの社会人と学生という立場の差は、太一が思っていたよりも大きかった。
克哉と意見が食い違うことも幾度となくある。それでも最後には、克哉は太一の目線まで降りてきて話をしてくれる。年齢や社会経験を振りかざすことなく、あくまで同等の立場として、ふたりができるだけ歩み寄った形の線引きをしてくれる。そこから窺い知れる彼の惜しみない愛情が、太一と克哉の距離を確実に埋めてくれていた。それを心から嬉しく思う反面、自分ばかりが甘やかされている現状に落ち着いてはいられないと焦燥感も募る。だから今はまだ、愛してるなんて言えやしないけれど。

「好きだよ、克哉さん…大好き」

精一杯のこの言葉が年上の恋人に伝わるようにと、太一はありったけの思いを唇に乗せた。


(爪先立ちみたいな恋)




ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。