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訊いても皆嘘しか言わない。
だから俺は聴くのをやめてしまった。

心残りが何もないと言ったらウソにはなるけれど、そう大差無いと思えるようにまでは、踏ん切りがついていた。

実は自分でもそれはそれでびっくりしている。
もっと執着とか、固執とか。
そういった『見えない何か』が絶対にこびり付いている筈だって思ってた。

たとえ離れていても、心は一緒。
方向は違えど、行き着く先は一緒。

そんな幻想みたいなモノを信じた事はないけれど…。
まさかこんなにあっさりと…。


あっさりと、全てが無くなっていくのを見ていられるなんて――。


(…………広いな)


何もかもを残して消えていったアイツ。

荷物は一つも無くなっていないのに、どうにも広く感じるのはなぜだろう?


(……止める事もしなかった俺が言うせりふじゃねぇな)


ひらりと落ちた楽譜を手にとる。
曲名は……もう薄くなって見えない。
あぁ、俺の今の心境にものすごくよく合っている。

嘲笑が聞こえる。
幻聴だという事は分かっている。

だって、ここには俺しかいないのだから…。



そうして、俺は天を仰いだ。



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(キャハハッ!んなわけねーだろっ!!!)


おい。そこのお前。
ちょっとだけシリアス雰囲気を楽しめたか?

俺はこういうのもできるんだって、わかったか???

やっぱ俺は最高。
つか、最高傑作が撮れた感じがしてならない。

よし。早速見てみるとしよう。


俺はニタニタ笑いながら、目の前のビデオを止めようと椅子から腰を上げた。


「……何やってるんですか?このお馬鹿さん」

「いたたたっ!!いって!!!!ちょ、お前それ返せ…っ」


……止めようと、ビデオに近寄った瞬間。

ローデリヒが俺の手から一冊の本を奪い取っていった。


「『これで君もハリウッドスター!~哀愁の男編~』…」


「わーわわーーーーわーーーっ!!!」
「……」


底冷えするような冷たい視線が痛すぎる。

RECボタンも止められるぬまま、ヴェストが帰ってくる約30分間…。
俺は、死にたくなるような無言の圧力というものを感じ続けることとなった。




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