彼の行動はいつも突拍子がないので、たまによくわからなくなる。 「理樹、明日デートしよう」 「……はいっ!?」 そんな突拍子もない言動に、いつも僕は振り回される。 「…棗…直枝……すばらしい」 ちなみに今、リトルバスターズの面々で昼食を取っていたところだ。 つまり、誰ひとり欠けることなく、もれなく、全員、この場に居る。 みんなが呆然と箸を止めている中、西園さんが1人うっとりと頬に手を当てていた。 「きょ、恭介?一体どうしちゃったのさ?」 僕はどうにか言葉を発するものの、その声は裏返っていた。 人知れず頬を染める。 それを西園さんがどう勘違いしたのか、更に艶やかな溜め息をついた。 「なに。明日な、ペンギンが来るんだ」 「えっ」 「ペンギン」 「……うん?」 「だ、か、ら。ペンギンが来るんだよ」 「うん。どこに?」 「動物園」 どういうことなの。 僕にはさっぱり恭介がわからないよ。 ペンギンだよ?動物園には普通に居ない? そんな息巻いて僕と行くようなとこ?あれ、でも来るって? ……わからない。 悶々と考えていると、いつの間にか恭介が横に来ていて、腕を引っ張って立たされる。 僕が言葉を発する前に、ぐいぐいと食堂の外へと引きずっていく恭介。 ちょ、ちょっと!僕まだうどん…! おばちゃんの特製月見うどんが半分…!! あああきっと真人のお腹の中に納まってしまう運命なんだ。 後ろから、真人の威勢のいい声が聞こえてきた気がする。 「もぉ、恭介ってばなんなのさ?」 うどんの恨みは忘れないと言わんばかりに恭介を睨み上げると、それを軽く受け流すように 口元に笑みを浮かべる。 ポン、と優しい手が頭に乗った。 「カップル限定なんだ。期間限定イベントで」 「……っ!!」 そう言って微笑んだ恭介の表情は、無邪気で、色っぽいのに少年っぽさも併せ持った、なん というか、最強の顔だった。 僕はいつもこれに勝てない。 「べ、別に行くのは構わないんだけどさっ!なな何もみんなが居る前で言わなくたっていい じゃないっ」 「ああ、ごめんな」 恭介は特に続けず、わしゃわしゃと僕の頭を撫で続ける。 だから僕も何も言えなくなってしまう。 恭介は、ずるい。 「……行くよ恭介。明日なんでしょ、忘れないでよね」 「お前こそ寝坊するなよ」 「しないよ!」 彼はいつも突拍子もなくて、理不尽で、強引だ。 でも決して嫌じゃない。 そこが彼の魅力なんだ。 僕を惹きつけて止まない、彼の。 +++++++++ 拍手ありがとうございました! 強引だけど、それを許される恭介の魅力。 20110412 戸隠澪子 |
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