イチャイチャ

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カタカタ・・・
小気味良く軽快に打たれるキーボード。
聞いていて楽しい。
そして心地よい温もりに全身の力が抜けてしまいそうになる。
「アトラス・・・」
「うん・・・」
「アトラス・・・」
「何です?」
「『何です』じゃない。いい加減離してくれないか?」
「どうしてです?」
「鬱陶しいからに決まっている。」
「俺は、別に鬱陶しく無いですよ。」
「オレが鬱陶しく感じているんだ。」
【鬱陶しい】と言う言葉を強調されたのにも関わらず平然としているアトラス。
寧ろ何処吹く風邪と言った感じなんだろう。
呆れたと言う感じで不動の口から溜息が零れる。
「ん?溜息なんて吐いて疲れたのか。」
根の詰め過ぎだと耳元で楽しそうに色有る声で言われ不動は、擽ったいのか首を竦める。
「ちが・・・お前が原因だ。」
己が耳を抑え顔を真っ赤にしながら身を捩り自分の背後に居るアトラスの方へと向く。
今2人は、ソファに腰を掛けている。
元々 不動は、自分のデスクで仕事をしていたがアトラスに抱き抱えられソファへと移動させられた。
不動の背後から抱きしめる形で座りだすアトラス。
不動は、そんなアトラスの行動を『仕方が無い』と思い諦めて自分の作業に専念する事にした。
早く仕上げないといけない論文だったから。既に締切まで時間が無かった。
その所為でアトラスや他の研究員達に構ってやる事が出来なかった。
我慢の限界だったのだろう。自分の研究室に篭ったまま出て来ない不動にアトラスは、痺れを切らせて不動の
研究室にズカズカと入って来た。
不動の研究室は、セキュリティの関係上不動以外の人間の出入りは、出来ない。
ただ例外を除いて。
その例外と言うのは、主任である不動が入室許可を与えた者のみ。
不動の研究室には、大切な資料が保管されている。もし誰でも入室を許可していたら資料は、盗まれる可能
性がある。
不動の信頼を得たの者のみが許される領域。
そしてその信頼と許可を得たのがアトラスなのだった。
カタカタ・・・とリズミカルに打たれるキー。
不動を抱きしめたままそのキーを心地よく聞いているアトラス。
「貴方にかかればこんな無機質で不愉快なモノでさえ心地よく感じる。」
耳元で囁けば擽ったいのか首を少し引っ込められ。
「耳元で囁くな」
と注意を受けてしまう。

当初自分を見様としない不動に不満を抱いていたアトラスだったが次第にこの状況に満足していった。
今ココに居るのは、自分と最愛の人だけ・・・
その人の仕事を誰にも邪魔される事なく心行くまで見ていられる。
しかも密室・・・誰も入って来れない空間・・・。
そう思えば不満なんか抱き抱えているのは、時間の無駄。
この状況を楽しまなくては、イケナイのだ。

今日一日この状況が続くだろう。
ベッドの絡みあうだけが愛情表現じゃないたまには、ジャレル様なこんな日もいいかもしれない。
だからアトラスは、決めたのだ。
今日一日は、彼を抱きしめて過そうと・・・
これも愛情表現の一つだと思って。




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