失敗した。
まさかこんな雑魚相手に怪我をするだなんて。
私は溜息をついて僧服の袖をまくりあげた。
肩近くの左腕にざっくりと斬られた傷。赤い血がどんどん流れでてくる。

「不覚だわ。Axの名が泣くわね・・・」

私は手近にある布をナイフで切った。
即席の包帯で自分の傷をしばろうとするが、これがなかなか難しい。

「俺がやる」

硝煙の匂いを身に纏った小柄な神父が歩み寄ってくると、サッと私の手から簡易包帯を奪い取った。
何も言わずに私の服を肩口から切ってしまう。あらわになった腕は、傷口が奇妙に変色していた。
私は再度溜息をつく。

「毒・・・かしら」
「その可能性が高い」

切りつけられたうえに毒まで入れられるなんてつくづく今日は運がない。
体にまわる前に腕だけ切り落としちゃおうかしらなどと考えているうちに、トレスの唇が私の傷口に触れた。

「ちょ、ちょっとトレス何してるのよ」
「毒をとる」
「はあ!?大剣に毒塗られてたんでしょ。そう簡単に抜けるはずないじゃない」
「否定。大剣に毒はなかった。毒は、そのまえの針だ」

うん?針?
ああ、そういえば肩を切られる前に別の奴になんか刺されたっけ。

「そんなのよく見てたわね・・・」
「傷口にまだ針の先が残っている」
「え、やだ。残ってたの」
「肯定。だから除去する」

再びトレスの唇が傷口に触れ、ジクッとでもいうような痛みが腕にはしった。
トレスがまるで長生種のように血を吸う。いや、血というか針を吸っているのだけど。
ほんの少しの間なのだろうけれど、まるで一時間もそのままでいたような気がした。

「・・・除去終了。卿はこのままアイアンメイデンに乗り込み休息をとることを推奨する」
「そうさせてもらうわ。・・・ねえトレス」

傷口を手際よく止血するトレスの頬に手を伸ばす。

「口、真っ赤ね」
「活動に支障はない」
「針は?どうしたの」
「呑み込んだ。俺の体には影響を与えない」
「ふぅん。そう」

私はトレスに顔を近づけ、己の血をぺろりと舐めた。
自分の血は、とても鉄臭い味がした。

「ありがとね、トレス」

機械人形は一瞬驚いたように固まったあと、いつものようにポジティブと返した。


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