拍手を賜りありがとうございました!!

*お礼SSは2種類(ランダム)です*

私は変わると決めたのだから(仮題)


 私は誰かが和を乱して場が険悪な雰囲気になったりしらけたりする状況が大嫌いだ。
だからそうならないように極力努力してきた。
和を乱す人をフォローしたり、元より和を乱さないようにそれとなく導いたり。
 そんな私は毎年学級委員になっていた。立候補でなく推薦で。
自他共に真面目で平和主義な優等生だった。
 だからあの日、私は友人の一人に言ったのだ。
「一緒に遊ぶ気がないなら今日はもういいよ」と。

 私を含む5人グループはそこまでお洒落で騒がしいメンバーではないけれど、
昼休みにバレーボールで遊んだりする程度には活動的だった。
 その中の一人がマイペースで気分屋なところがあり、皆で楽しく遊んでいるのに余計な一言を言ったり、
バレーボールをどれだけ落とさずにトスやレシーブを続けられるか挑戦的な遊びをしていても自分のところで故意にボールを止めたりするのだった。
恐らく自分に注目して欲しいとか、ボール遊びでなく話がしたかったりしたのだろう思う。
けれど、何の前触れもなく急に邪魔するような行動を取られると、
それだけでカチンとくるし理由すら聞きたくない気分になるのだ。
一度だけでなく毎日やられると苛立ちや不満はどんどん膨らんでいく。
 そういうことが続いた頃、グループ内で嫌な雰囲気になりつつあるのを私は感じていた。
なので一度ちゃんと彼女にこちらの気持ちを伝えなければならないと思った。
そこで私は彼女がボールをわざと抱きかかえて私たちに笑いかけた時に言ったのだ。

「一緒に遊ぶ気がないなら今日はもういいよ。私たちはまだこれで遊びたいから続けるけど」

 私がそう言うとその子は酷く驚いた顔をして、バレーボールをこちらに転がすように投げ捨て教室へ戻っていった。
その後ろ姿を見ていると申し訳ない気持ちになったけれど、
でも遊ぶのが楽しくてこうやって昼休みに集まっているのに彼女一人にぶち壊されるのはその子たちも気の毒だったから。
 一度こう言ったら分かってくれるのではないか。
明日からはこちらの気持ちを汲んで一緒に楽しみながら遊んでくれるか、
もしくは私たちと遊びの趣味が合わないなら別のグループのところに行くかするだろうと思っていた。

 しかしながら次の日、登校時は気にならなかった女子の視線が次第に刺すようなものになっていった。
どうやら昨日注意した子が私を筆頭としたグループからいじめられてグループを抜けたと吹聴して回ったらしい。
真面目な学級委員が実はいじめのリーダーかよ、という雰囲気をびしびしと感じる日々になった。
いじめたつもりはない、こういう経緯だと同じグループの友人らが何人かに話してみたけれど、
集団心理というものは恐ろしいもので、誰か一人ターゲットを見つけ敵対すると途端に一致団結したりするのだ。
 とはいえ私を表立っていじめ返すような人はいなかったのが幸いであるが、
グループ内もギクシャクし始めてしまい、それぞれ別の友人らと仲良くするようになってしまった。
私は同じクラスにはそういう相手がおらず、事情を全て知っている隣のクラスの友人と一緒に過ごすことが増えた。
その子には今でも感謝しているし、これからも交流は続けていきたいと思ってはいるが、
もし過去に戻れるとしても中学時代には絶対に戻りたくないと誓えるほどに私の中学時代後半はつまらない苦痛の日々だった。

 そんなわけで、同じ中学の人間とかかわりたくなかったので私はぎりぎり電車通学できる距離にある私立の高校を受験した。
両親からは不思議がられたが、その学校の特進コースに行きたいのだと言うと「勉強熱心でよろしい」というわけで、
お金がかかって非常に恐縮ではあったのだけれども何とか了承を得たのだった。
そうなると何としてでも合格しなければならないので、私はひたすら勉強した。
学ぶことは好きなので受験勉強も苦ではなかった。
合間に読書をしたりお菓子を作ったり。
学校が苦痛だったので家にいる時間だけが自由で楽しかった。


 高校に入学してから、私は中学までの自分を封印しようと決めた。
もう学級委員のようなリーダーっぽい言動はしない。
表立って浮いている生徒のフォローなんてしないし、皆が言わないなら・やらないなら自分が、なんて思わない。
私はその他大勢になって目立たないように学校生活を送るのだ。
平穏で平和な日々がどれほど貴重か、私は身に沁みて知っているのだから。

「アズちゃん、お帰り」
「梓、日直お疲れ様。明日の件だけど皆でリールに寄って話そうって」
「分かった。男子たちは?」
「先に行ってるよ」
「じゃあ私たちも行こう」
「うん」

 後ろの席の姫野 恵(ひめの めぐ)と左横の席の壬生 巴(みぶ ともえ)は高校でできた初めての友人だ。
メグは漫画に出てくるアイドルように目が大きく唇もプルプルで可愛い。
その上、性格は明るくてさっぱりしているし、男子とも物怖じせずサバサバとした態度で話すので
皆の人気者だ。彼女と話しているとこちらも元気になる。
 巴ちゃんも目が大きくて童顔でお姫様のように可愛い子。
性格も穏やかで優しく物腰や仕草が品が良い、見るからにお嬢様。
人の話をとても楽しそうに聞く姿も愛らしく、一緒にいて癒やされる。
二人ともとても素敵な女の子だ。
 彼女たちとは席が近かったことから仲良くなった。
二人に比べると見た目も性格も何の特徴もない物静かで地味な私だが、
それでバランスが取れているのか、三人で過ごす時間は居心地が良い。

「お疲れ」
「先に飲み物だけ注文しちゃったよ」
「ほら、メニューだ」

 喫茶店・リールで待っていたのはクラスメイトの男子三人。
一学期半ばのグループ学習で同じ班になってから話すことが増えた。
 メニューを渡してくれたのは、学級委員長の間宮 透(まみや とおる)。
自分にも他人にも厳しく真面目で、授業中にふざけていたり
新任の先生に冗談を言ったりして困らせる生徒たちには厳しく注意する。
規律を厳守する学級委員長の鑑だ。
 周りから煙たがられようと態度を変えない。
特進コースは成績優秀、品行方正であれという志を持っているので実行し、それをクラスメイトにも求め続ける。
押しつけがましいという生徒もいるけれど、私は素直に彼を尊敬する。
人に耳の痛い話をするのは勇気のいることだ。私はすぐに折れてしまったから大変さがよく分かる。
 それにこのクラスは特進コースなのだ。
成績優秀な者が集まったのだから、学年全体で成績上位を求められることは当然だろう。
だから私は間宮くんを支持している。

「決まった?」
「私、チョコレートパフェセット」
「私はコーヒーのみで」
「私もリンゴジュースだけにする。すぐに夕食だから」
「じゃあオレはベリータルト頼もうっと」

 ベリータルトを注文した彼は青 龍之介(あお りゅうのすけ)。
名前は雄々しいけれど、2、3歳は年下に見える外見である。
男の人に可愛いは失礼だろうから口には出さないが、目が大きいのと無邪気な性格も相まって
男女問わず弟のように可愛がられている。
 ただ彼はいたずら好きらしく、冗談やささやかな嘘を言っては人を驚かして喜ぶ。
私も「肩に虫がとまってる」なんて言われて「ひっ」と声を上げて後ろに飛び退いたことがあった。
結局それは嘘だったのだけれど、私の動揺する姿が見られたことに満足したらしかった。
その悪癖はどうにかしてもらいたいけれど、彼がいると場が明るくなるし、
根は悪い人ではないので彼のいたずらは仕方なく許している。

「で、明日はどこに行くの」

 ミルクを入れたコーヒーを飲んでいるのは波多野 優一(はたの ゆういち)。
私は彼が苦手だ。それというのも、彼は中学の時の同級生なのだ。
誰も来ないであろう遠くの私立を選んだのにまさか同じ中学の生徒が入学式にいて、
しかもクラスメイトだったと知った時の絶望感たるや。
 しかしながら彼とは中学の時、クラスが違った。
なので私の噂など知らないだろう。
女子ならともかく男子が女子のいじめに関する話などに興味があるわけがない。
そう考えてできるだけ普通に接しようと思うのだけれど、
あまり彼の前では中学の話をしたくなかったし、無意識に話題を避けていた。
 彼の中学時代のことはよく知らないけれど高校では比較的静かな方で、
かといって寡黙なクール男子というわけではなく、
冗談ばかり言っている青くんをたしなめたり、一緒に笑ったりする普通の男子生徒だ。
成績は実力テストも含めて学年一位だという噂だけれど、いつも机にかじりついているわけではないのが凄い。
先日あったばかりの期末試験も全て100点だったらしい。青くん情報だが。

 そんな彼らと私たちは明日の土曜日に遊びに行く予定なのである。
グループ学習でなんとなく同じ班になったこの6人ではあるが、
共同制作レポートの出来も非常に良かった以上に、元気の良いメグと青くんが意気投合したのもあって
それから一緒にお弁当を食べたり、休み時間にどちらともなく集まって話をすることが増えた。
 青くんは絵を描くことが趣味らしく、綺麗なものが好きなようで時々メグにモデルを頼んでいるらしい。
それで二人は殊更仲が良く見えた。
確かにメグはずっと見ていても飽きない見た目をしている。
可愛らしいけれど、黙っているとどこか寂しげと言うか何かを訴えてくるような瞳が魅力的なのだった。
そんな彼女の魅力に惹かれて青くんは教室でもクロッキー帳を持ち出してメグの絵を描いている。
そこには色んな角度の、色んな表情をしたメグが魅力的に描かれているのだった。

「やっぱりレイヴサイトでしょ!新しいアトラクションができたって」
「私、垂直に落ちる絶叫系は無理そうなんだけどそれでもいいかな」
「うん、そういうのは好きな人だけ楽しめば良いよー。他にも沢山あるんだからさ」
「夏用にウォータースライダーみたいなアトラクションができたらしいんだ。
 一応、濡れてもいいようにタオルとか持っていった方がいいかも」
「楽しそうだね」
「間宮くんは遊園地でいい?」
「ああ、問題ない。僕もそういうところに遊びに行ったことはあるさ」

 前に座っている間宮くんの飲んでいる紅茶から良い香りが漂ってきた。
隣の巴ちゃんはリンゴジュースを美味しそうにストローで飲んでいる。
彼女は遊園地でも良いのだろうか。
特に何も言わないので良いということなのかもしれない。

「巴ちゃんは遊園地で大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。そんな遠い場所にあるわけじゃないから
 いつも学校から帰る時間くらいまでに帰り着けるだろうし」
「そうだね、ここから二駅だもんね。
 とはいえ、私は流石に遅くなりそうだからメグの家に泊めてもらうことにしてるけど」
「そうなの?いいなぁ、私もお泊まりしたいなぁ」
「じゃあ巴もおいでよ。二人くらいなら余裕で泊まれるから」
「本当?じゃあ、お母さんに聞いてみるね」

 嬉しそうにしている巴ちゃんにほっこり癒やされながら、私は手元のコーヒーに砂糖とミルクを入れて静かにかき混ぜる。
学生でも躊躇せず手が出せる値段のコーヒーだけれど、ここのコーヒーは香りが抜群に良い。
口に含むと豆の香りと風味が広がり酸味は控えめ。
それまでコーヒーには必ず砂糖とミルクをたっぷり入れていたけれど、
ここのコーヒーを飲んでからはデザートと一緒の時はブラックで飲むようになった。
今日は家に帰り着くまでにおなかが減りそうだから砂糖とミルクを入れているけれど。

 そんなこんなで脱線しつつも待ち合わせ場所や時間を決めて解散した。
波多野くんと一緒の空間にいるのは気まずいけれど、
同じ電車に乗るのにバラバラで帰る方が余程感じ悪いことになってしまうので平静を装って一緒に駅に向かう。
とはいえ途中までは青くんやメグも一緒なのだけれど、メグが次の駅で、青くんはその二つ先の駅で降りてしまうのだ。
そこから二駅先まで行き、その駅で快速電車に乗り換え七駅先で降りる。
 そういうわけで、青くんと別れてから30分は二人きりになってしまう。
これまでも何度か電車が一緒になることがあったけれど、
電車に乗る時に別々だったこともあり、話すことなく済んだのだが今日はそうもいかない。

「ホント、二人とも辛抱強いよね。毎日片道1時間近く電車通学してるなんて」
「4ヶ月も通ったら慣れてきたけどね。単語覚えたり本読んだりしたら結構あっという間に過ぎるよ」
「なるほど。平瀬さんは何して過ごしてるの?」
「私は行きは朝テスト対策で英単語とか古文の訳を暗記してるかな。帰りは本読んだり試験前は暗記系の教科を覚えたりしてるよ」
「そういうことか。二人とも頭が良いけどこんな移動の合間にも勉強してたからなんだね」
「他にすることないからね、仕方なくよ」

 そんな会話をしていると時間は過ぎていく。駅に着いた為、メグに続き青くんも降車した。
残された私と波多野くんは一気に黙り込む。
元々私も恐らく波多野くんも聞き手側なので余程相手に話したいことや聞きたいことがない限り話しかけることがないのだろう。
私も何を話せば良いのか分からないので黙っている。とはいえ、隣にいるクラスメイトを放っておいて単語帳を開くのは失礼すぎるのでやらない。
結果、黙って並んで突っ立っている状況である。

「平瀬、席空いたから座ったら」

 突如、話しかけられた私は「んっ?」と思わぬ声が出た。
そんな私に構わず波多野くんは「ここ」と目の前の空いた座席を指差す。
他にも立っている人はいるけれどと思い辺りを見回していると、彼が私の腕を掴んでやや強引に座らせた。

「あの、ありがとう」
「ごめんね、腕引っ張って。でもまだ駅に着くまで20分くらいあるから疲れるでしょ」

 波多野くんは元からあまり声が大きくない人だけれど、電車の中だと更に聞こえにくいが確かに聞こえた。
彼は優しい。私が勝手に過去にこだわって苦手にしているのが申し訳なくなるほどに。
私はもう一度「ありがとう」と言った。
今まであまり顔を見ずにいたけれど、今度はきちんと彼の顔を見て。
彼は吊り目がちで表情があまり変わらない方だけれど、初めて目が合った今はなんとなく目が笑っていたように思えた。
 それからはどんな参考書を使っているかとか、あの先生の試験問題は手書きで読みづらいよねなどといった話をした。
隣で並んでいるよりも目線が離れていたので話しやすかったこともあるし、私の警戒心が解けたことが大きいのかもしれない。
これなら今後、電車で彼と鉢合わせたとしても気にしなくても良いだろうと私は安堵するのだった。

「平瀬はここから家まで遠いの?」
「自転車で10分くらいかな」
「薄暗いけど大丈夫?」
「大丈夫だよ、いつものことだし」
「そう、気をつけてね」
「ありがとう。波多野くんもね」
「うん。じゃあまた明日」
「また明日ね」

 そう言って私は彼と別れ駐輪所へ向かった。
彼は歩いて駅前広場を横切っていく。徒歩と言うことは家はこの近所なのかもしれない。
同じ中学に通っていたけれど一度も同じクラスになったこともないし彼のことを何も知らないなと私は彼の後ろ姿を見ながら思った。










これももう一つのWEB拍手お礼画面と同じで続きものです…。
本当は全員カップルにしてやろうと思ったんですが、
どの組み合わせが良いか決められなくて
結局、名前変換の分岐小説にしようと。
もしメグや巴を気に入ってくださって
あの男子とくっつけば良いのにと思った方がいらしゃったらすみません。

拍手だけでなくここまで読んでくださいましてありがとうございました!
どうぞこれからもR⇔R を宜しくお願い致しますm(__)m




何かメッセージのある方はお願いします! 簡単メッセージにポチっとチェックを入れて送ってもらえても幸せです^^
お名前
メッセージ
あと1000文字。お名前は未記入可。

簡単メッセージ