ぱちありがとうございました!
今後ともどうぞよろしくお願いします。





***

「明日の朝食は?」と問いかける(逆裁・カミチヒ)

金曜の夜は一緒に電車に乗って、彼の家に帰り、私の作る夕食でお腹を満たす。
映画を見たり本を読んだりしてゆったり過ごした後は、大人の時間だ。
仕事がなければ、土曜や日曜もずっと二人で過ごす。
そうして月曜の朝に一緒に出社して、次の金曜の夜、私は彼と共にまたこの家の玄関をくぐるのだ。

週末同棲という言葉が頭をよぎって、その気恥ずかしさに首を振る。
でも実際、この状況はその言葉で表現するのが一番ふさわしいのだろう。
不満があるわけじゃない。どちらかと言うと、しあわせでめまいがするような日常だ。

「考え事かい?コネコちゃん」
鼻をつままれて、噛みつくようなキスと痛いくらいの抱擁が私を咎めた。
ようやく開放された唇が、ふうと吐息をひとつ吐く。
「もう……しあわせだなあ、って思っていただけですよ」
「そうかい」
く、と、喉の奥で笑う声。他愛ない考え事にさえ嫉妬する彼が可愛く思えて、ぎゅっと抱き締める。
「それでも、こういうときはトバしてくれたほうが嬉しいものだけどな、男としては」
「な……なにを言って」
いるんですか、とつづけるつもりの唇は飲み込まれて、
その後口を付いて出るのは意味を成さない声と、吐息ばかりになった。


「ときにコネコちゃん。明日の朝食は?」
「……いきなりそれですか」
「いいじゃねえか、別に」
「まあ、いいですけどね」
最中にムードを重視したくせに、終わるとどうしてこうなのだろう。
比較対象を知らないからなんともいえないけれど、男というのはみんなこうなのだろうか?
「フレンチトーストにハムとチーズを添えて、サラダは水菜とトマト。コーヒーはお任せします」
どうですか?と首を傾げて見せると、彼のくちびるがほころんだ。
「楽しみだな」
「そうですか?結構簡単で申し訳ないんですけど」
「オレが楽しみって言ったのは、チヒロと並んでキッチンに立てることについて、だぜ」
勿論、手料理だって楽しみだけどな。
そういわれて、私は赤面した。

キッチンに並んで立って、共に朝食の支度をする。
たったそれだけのことなのに、どうしてだか特別な行為のような気がしてしまう。
こうしてベッドを共にするよりも、ずっとずっと親密で、近い行為に思える。

しあわせな休日の朝を夢想しながら、私は彼の腕の中でそっと瞳を閉じた。



ついでに一言あればぜひどうぞ(拍手だけでも送れます)
お名前 URL
メッセージ
あと1000文字。お名前、URLは未記入可。