拍手ありがとうございます。

これからも妄想爆発させて行きたいと思います。






拍手お礼短編

花束をありがとう
良太郎






自転車かごの中の卵が揺れる。
あっと思ったときにはもう遅かった。
自転車はぐらりと体制を崩し、歩道のガードレールにつっこんだ良太郎はきれいに中を舞った。



「あ、おかえりー買い物ありがとーってどうしたのその姿は!」

良太郎は曖昧な笑いを浮かべた。
卵にまみれ土にまみれ壊れた自転車を引きずって登場したこの姿を見て驚くのは当然だろう。

「あの・・・ごめん、ガードレールに突っ込んじゃって、卵が・・・」

中を舞いつつも、卵だけはなんとか死守しようと思ったのだが、その半数以上は良太郎の体のあちこちにへばりついている。

「いや卵はいいけど、良太郎は大丈夫だったの?道路に飛び出しちゃったんでしょ?」

「うん、散歩中の犬と三輪車に轢かれただけですんだよ。今日は運が良い日みたい」

「え、あ、そう・・・」

相変わらず運が良いのか悪いのかわからない不運少年である。
そのとき、ふと、花のにおいが良太郎をくすぐった。
庭の草花が、出かける前よりきれいに整っている。

「ガーデニング、うまくいったみたいだね」

「うん、まあね。てか別に買い物くらい自分で行ったのに」

「それじゃあゆっくりガーデニングできないでしょ。それにいつもお世話になってるお礼」

「・・・良太郎、両手出して」

「何?」

突然言われ、いぶかしみながら出した手に、ばさっと満開の花束が渡された。

「わっ、えっ、これどうしたの?何?」

「いつもお世話になってるのはこっちですー。それお礼ね!良太郎にいいことありますように!」

「お礼・・・」

それは卵まみれ土まみれの自分とは対照的だった。
しかしその想いは、ただただ、うれしくて。

「さってじゃあ愛理さんに約束してたクッキー作ってくからー。卵半分あれば足りるよ、ありがとう!」

ぐしゃぐしゃの卵を渡すとき、思い切って言ってみた。

「そのクッキー最初に味見させてくれないかな」

「え、いいけど。それ私の料理信用できないってことー?」

「ち、ちがうよ!ただ、食べたいなーって・・・」

「そう?ならいいけどね」

少しすねてしまった彼女を見て、しかし笑顔がこみ上げてきた。
さっそくいいこと、あったよ。

「うん、ありがとう」





>>Thank you!





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