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【 メール 】
カチカチ。
携帯のボタンをひたすら押す音が響く。
その速さはロイドがキーボードをタイピングするのに負けず劣らずの速さである。
高速でメールを打つ張本人は、先程からロイドが舐め回すような視線を向けているというのにまるで気付かず、
(気付いていても敢えて無視しているのかどうか、定かではないけれど)
携帯のディスプレイに御執心の様子。
構ってくれないと駄目な上司様はそれが甚く気に食わないらしく絶好調に不機嫌。
声をかければ良いのに声をかけるのが嫌なのか(声をかける前に気付いて欲しいらしい)ただ黙って見つめている。
ようやくメールを打ち終えたのか、ふー、と一息吐きつつ、ようやくロイドの方へと視線を向ける。
「あれ?ロイドさんどうしたの、何か不機嫌ですね」
「そーぉ?気のせいじゃないの〜」
「…めちゃくちゃ不機嫌じゃないですか。どうしました?お腹減りました??」
「違うよ。子供じゃないんだからさ」
「じゃあ何ですか。言ってくれなきゃ解らないですよ」
「………ずいぶんメールに集中してたよね、きみ」
「あぁ、これですか?」
ふふっ、とどこか嬉しそうに微笑み、携帯に視線を落とす。
それがまたロイドをムッとさせた。
「今スザクくんとメールしてたんですよ」
ピク。
ロイドの神経の細い線に亀裂が入る。
メールの相手が男、しかも部下の一人であるだなんて。
一体いつの間にメールアドレスを交換したっていうんだ。
こっちは電話番号すら教えてもらってないというのに。
(教えたらしつこそうだから、という理由で結局教えてもらえず仕舞いなのだ)
だというのに枢木スザクにはアドレスを教えたっていうのか、あまつそんな楽しそうにメールをやり取りするっていうのか。
こっちがどれだけじっと見つめていたって気にならないくらいに。
こっちがどんな思いをしてるのか知りもしないで、自分の目の前で夢中になって。
全てが気に喰わない。
「スザクくんってばおかしいんですよー。
生徒会で飼ってる猫を何とか懐かせようとしてたみたいなんですけど、やっぱり噛まれて今保健室なんですって」
おかしいでしょ?
そう無邪気に笑うから。
「ぜーんぜん、おかしくないんだけど」
わざと不機嫌ですって主張しているみたいに、ぶっきらぼうな声で。
細めた瞳は鋭く、射抜くように真っ直ぐ彼女を見据えていた。
明らかに様子のおかしな上司を見て、不安そうに彼女の表情が蔭る。
そうだ、そうやってこちらの事を考えれば良い。
自分以外の誰かに気を取られることなく、頭の中を自分でいっぱいにしていれば良いんだ。
「きみ、メール禁止。特にスザクくんとメールしたら減給だから」
「はぁっ?!何無茶な事言ってるんですか!!大体そんな事ロイドさんに言われる筋合いっ…!!」
言葉の途中で、彼女の手の中の携帯のランプが点滅して、バイブレーションの音が低く響く。
気まずそうに口を閉ざし、どうしたものかと躊躇いながら携帯とロイドの顔を見比べる。
メールの内容を気にしているっていうのか?この状況で??
あんな他愛ない内容のメール無視すれば良いっていうのに。
目の前にいる僕を放っておいて、きみは彼とメールなんかしちゃうっていうの??
それって、ねぇ。
ひどくない?
だから、彼女の手か携帯を奪い取ってやった。
「あーっ!ちょっと何してるんですかー!」
抗議の声を上げて、奪い返そうと必死に手を伸ばしているけれど。
身長差の為いくら背伸びしようと飛び跳ねようと届きはしない。
彼女程早くはないが、決して不慣れではない手つきで素早く操作する。
さっさと目的を果たすと、用済みだと云わんばかりに携帯を彼女の方へと放り投げる。
驚いたものの何とかキャッチした彼女が顔をしかめてこちらを見ているが、知った事ではない。
きみが悪いんだよ?
目の前にいる僕を放っておいてメールなんかに夢中だったんだから。
「スザクくんのメールには僕が返信しておいてあげたからね。
あと、僕の携帯の番号とアドレス登録しといたから、よろしくぅ〜」
「な…っ、よろしくじゃありません!もー!!ロイドさんのばかー!!」
「だって面白くないでしょぉ〜?」
僕がいる時は僕の事だけ見てれば良いのにさ。
いや、違う。
僕がいない時だって常にきみは僕の事を考えて入れば良いんだよ。
きっとそうであるべきだ。
なんて、身勝手な思いだと。ロイド自身は気付いていないけれども。
我侭な上司にこれ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、溜息一つ吐くと大人しく携帯をポケットにしまいこむ。
とりあえず今日は軍から帰ったらスザクにお詫びのメールを入れよう。
そしてその後…あまり気は進まないが、目の前の上司様にメールでもしてやるとしよう。
そうでなければきっとまた一騒動起こりそうだから
一方、アッシュフォード学園では。
「あ、メール。ちょっとゴメン」
「なんだスザク、恋人か?」
「まさか。軍の人だよ…って、あれ?」
「どうした?」
「…ははっ、ロイドさんらしいや」
返信されたメールは軍の人は軍の人でも、違う相手からだった。
思わず吹き出してしまったメールの内容は。
『ざーんねんでしたあ!今は僕と一緒だからメールなんてさせてあげないよ?』
ちらりとメールを盗み見たルルーシュは呆れて冷ややかな目をする。
「軍ってのはお気楽な所みたいだな」
「そうかもね。全く…困った上司だよ」
苦笑はしていたものの、瞳は柔らかで。
それは彼がこのメールの相手も、先程までのメールの相手も、そのどちらも嫌いではないという事を物語っていた。
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