(コン→ユ)

忍耐力には自信がある。




ロードワークの後に、お風呂に入るのがユーリの習慣だ。
そして、ユーリがお風呂に入っている間にコンラートは素早くユーリの着替を用意する。
ユーリはいつも一緒に入ろうと誘ってくれるのだが、コンラートは丁重に断っている。
流石に護衛が主と一緒に風呂に入るわけにはいかない。
・・・断る理由はそれだけではないのだが。
今朝も例にもれず、コンラートはユーリの誘いを断って着替を用意していた。
一応ノックをして、まだユーリが風呂からあがっていないのを確認してから脱衣所の中へ入る。
「ユーリ、湯かげんはどうですか?」
「ん〜!調度いいよ〜」
中からユーリの気持よさそうな声が返されて、コンラートは微笑する。
「着替、ここに置いておきますね」
いつもの場所に着替を置いて、コンラートは脱衣所を出るつもりだった。
しかし、
「うわあっ!!」
ガシャーンっ!
「ユーリっ!?」
唐突にユーリの悲鳴と何かが倒れるような音が聞こえて、コンラートは足を止めた。
「大丈夫ですか!?ユーリっ!?」
返事は無い。
「ユーリ!・・・入りますよ」
慌てて中に入れば、大きな浴槽の側に仰向けに倒れるユーリの姿があった。
浴槽から出たところで足を滑らせたのかもしれない。
かけよって上体を抱き起こす。
「ユーリ!大丈夫ですか!?」
「あ〜いたたたっ腰打った・・ご、ごめんコンラッド・・ちょっと滑っちゃった」
「ああ・・他に痛いところは!?頭は打ってませんか?」
「平気・・あ〜びっくりした」
元気そうな様子に安堵して、ほっと息をつく。
と、安心した途端、コンラートは自分の腕の中の存在にぎょっとする。
風呂場なのだから当然だが、ユーリは裸だった。
上気したなめらかな肌に、滴る水滴。
ユーリの肌に触れている手が、身体中の血液が集まったかのように熱くなる。
「コンラッド?」
不思議そうに見上げてくる漆黒の瞳にハッとして、コンラートはユーリから目をそらした。
「?」
「た、立てそうですか?」
「ん。大丈夫ーっ。よいせっと」
ユーリはコンラートに支えられながらよろよろと立ち上がる。
「気をつけて下さいね」
「おう。平気平気〜っうわあっ!?」
「・・・え?」
普通なら、再びよろけたユーリを受け止めることは容易なはずだった。
しかしその時コンラートはひどく動揺していた。
ユーリを支えるはずが、足に力が入らず、コンラートまで一緒に倒れる。
ドシャっという大きな音が風呂場に響いた。
「っ、うわっ!?コンラッドごめん!」
気付けばコンラートはユーリの下敷きになっていて。
「────っ」
こんなにも近くにユーリがいることに、コンラートは戦慄した。
頭が真っ白になる。
ユーリに怪我がないかどうか確かめなくてはならないのに声が出ない。
「コ、コンラッド?大丈夫?怪我してない?ごめん今どけるから・・っ!?」
コンラートの上から退けようとするユーリの腰に、気付けばコンラートは手をまわしていた。
離したくなくて。
「えっ?」
「あ・・・っす、すみません」
無意識にユーリに触れていた自分に愕然としながら手を離す。
「謝んなって!コンラッド何も悪くないじゃん。ほんとごめんなっ」
ユーリは素早く立ち上がって、つられるようにコンラートも立ち上がる。
「あちゃ〜服濡らしちゃったよな・・あ!コンラッドもお風呂入っちゃいなよ!おれは先にあがってるからさ」
ユーリは笑顔で言って、脱衣所の方に歩いて行く。
コンラートは何の返事も返せないまま、呆然としていた。
ユーリの腰に回してしまった手を見つめ、ため息をつく。
「そろそろ・・限界かもしれないな・・・」

自慢の忍耐力も、品切れが近いようだ。
コンラートはちょっと泣きそうになりながら、もう一度大きなため息をついた。


***
そろそろ限界なコン→ユ(汗)
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