Ich danke Ihnen bestens☆ 拍手ありがとうございます お礼にちょっとしたお話をどうぞ [OH! MY DARLING!!]SB!・蓮キョ 今日こそは!とキョーコは意気込んでいた。(決してダジャレではない。念のため) 結婚してから3ヵ月、彼女には前々から考えてはいたが、未だ実行できずにいることがあった。 「だって、いつまでも“敦賀さん”なんて呼ぶわけにはいかないんだもの」 「でも、だからって呼び捨てにするのも……」 そう、彼女を悩ませているものとは“彼の呼び名”。 結婚してから既に3ヵ月も経っているというのに、キョーコは今だに自分の夫を名字(それも芸名の、である)にさん付けで呼んでいた。 それについて、ゆっくり慣れてくれればいいよ。と微笑って言ってくれている蓮のほうといえば、すんなりとキョーコを呼び捨てにし、時にはとろけるような声でからかうように“俺の奥さん”なんて言ってのけていたりする。 キョーコはそれを思い出すだけで身悶えるようなものはゆさを覚えたりするというのに……。 そういうところはてっきり日本人だとばかり思っていた彼がアメリカ国籍を持つ“外国人”なんだなぁと再認識するところだったりする。 とにもかくにも、遠方ロケで家を空けていた蓮が数日ぶりに帰宅する今日はまたとないチャンスなのだとキョーコは気合いをいれる。 実は本当のことをいうと、彼の名を呼ぶことは出来ないことではない。 女優魂を目覚めさせれば、簡単なことなのだ。 だけど、蓮の奥さんは女優の京子ではなくて、キョーコ自身なのである。 奥さんであるからにはいつまでも芸名の名字にさん付けでは呼んでいられないとキョーコは思うのだ。 「自然に…そうよ。自然にすればいいだけよ」 ぎゅぅと両手を握り締めてキョーコは自分自身に言い聞かせる。 そうこうしているうちに、蓮の帰宅時間は近づいていた。 ピンポーン インターホンの音に、キョーコが顔を上げればモニターには彼がエントランスを通り過ぎる後ろ姿が映っていた。 蓮はキョーコが部屋に先に帰っているときには必ずグランドフロアのエントランスで一度インターホンを慣らす。 「だって、お帰りなさいって出迎えてもらうの、新婚さんらしくていいよね」 というのが、蓮の言い分だ。 だからキョーコは蓮がエレベータで部屋の前に上がってくるのに合わせて玄関をの鍵を開けて彼を迎えるのだ。 ガチャリ ドアノブをひねる音がして、蓮の姿が見える。 キョーコは深呼吸をして、用意していた言葉を口にした。 「おおおぉおおおかえりなさい、あ…ぁあなたっ!」 かくして、顔を真っ赤に染め上げ、吃りながらも言い切ったキョーコが恐る恐る見上げると、“あなた”であるところの旦那さまは大きな手で自らの口元を覆って無表情で固まっていた。
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