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拍手小話『うちの人形』


怖い話、とは言えないかもしれないが、
苦手な方にはとてつもなく嫌な話であろう、という話。

私の趣味の1つに、人形道楽がある。
所謂『球体間接人形』『スーパードルフィー』というやつだ。
数年前から手を出し始め、気がつけばあれよあれよと言う間に増殖し、
今現在ヘッドだけの子も含めて、11体と同居している。
人間よりも人形が住む部屋なのだ。私の部屋は。

その中の一人に『N-C』という名の人形がいる。
N子、N子、と呼ばれたり、ひらひらした格好をさせられたりしているが、
れっきとした少年人形だ。
彼は、もともと私と庵守ちゃんで考えていた物語の登場人物で、
庵守ちゃんが創作したキャラクターだった。
それを私が気に入って、『U-NOA B-el』という人形をカスタムし、立体化したものだ。


人形に関する怪異、というのは話としては定番だが、
一緒に暮している限り、そういった妙な体験はついぞしたことがない。
曰くも由来も分からない人形ならばそういったこともあると思うが、
うちにいる子たちは殆んど、私が最初のオーナーであり、
一部の例外もちゃんと出所が分かっている子達ばかりだ。
何よりそう古いものでもない。
おかしな話など、起こり得るはずがない、と思っていたのだが。


彼は私の部屋に遊びに来ると、N-Cを猫かわいがりする。
N-CもN-Cで、誰が生みの親なのか、ちゃんとわかっているらしく、
途端に機嫌の良い顔をする。
もちろん、そんなことは人形好きの思い込みだと分かってはいるのだが、
そんな気がしてならないのだ。
彼をベッドに追いやって、洗濯物干すために、
慌しく部屋の中を行ったりきたりしていた時だった。

「この子はわかってるんだねえ」
「何が?」
「見るんだよ。妃蝶さんが動くとね。視線を動かしてる」

思わず振り返ると、テレビラックに座ったN-Cと目が合った。

人形の瞳に入れる目と言うのは、大雑把に分けると、
追視するものと追視しないものがある。
一部のグラスアイなどでは光の屈折で視線が追いかけてくるようにみえるのだが、
N-Cに使っていたのはアクリルのもので、視線が追いかけてくることなどない。
それに、あくまで光の屈折に過ぎないので、
自分を見ているように見える、ということはあっても、
対象を追いかける、という作りではない。
私のように人形好きな人間なら、『なんちゃって、そういう風に見えますよね〜』という
会話で済ませられるのだが、相手が相手だけにドキッとした。
どうにもそれに気付いてから、N-Cの『我の強さ』が増してきたようで、
思いもがけない時に、此方を睨んでいたりするので、非常に心臓に悪い。



二次元のものに名前を与え、姿を与えると、
それはそのものの式になるらしい。
式とまではいかなくとも、名前を与えられたヒトガタで、
中味はからっぽのものが、日々いろんな感情を受けているのだから、
何も入らないほうがおかしいのでは、とも思う。


悪さは今のところされていないが、
その『得体の知れない何か』が入っているかもしれない11体と共に、
私は今日も暮している。
それが、人形と付き合う醍醐味でもあるような気がする。





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