『波乗るネズミ』


水は苦手だ。
足が取られる。
目に飛沫が入る。

水中なんて以ての外。
沈む、溺れる、息苦しい。

ここも水場のあるステージが存在するが、落ちた時の事など考えたくない。


「ソニック、海行く?」


だからこのお誘いはノーと言わざるを得ない。

「ソ-リー、ピカチュウ・・・って俺が水がノーサンキューなの知ってるだろ!」
「うん。それはそうなんだけど泳ぎに行こうってわけじゃないんだよ」

そういって彼が取りだしたのは一枚の板。
葉っぱみたいな形でものすごく軽い。
サーフボードってやつだ。

「サーフィン?」
「そう。ちょっと肋骨の下が痛くなるけど」
「サーフィンねぇ・・・ンン・・・」

万一海に落ちても掴むものはあるということか。

「ピカチュウ、これ軽いけど頭打つとめちゃくちゃ痛いんだろ?」
「海から顔上げた時に運が悪いとね」

手でサーフボードと頭がぶつかる仕草をした。
それだけでもう痛そうに思えてくる。

「・・・やっぱりノーサンキューだ!」
「あれ、いいの?」
「いい、遠慮しとくぜ」
「そう言わずにさ」

両手を振って断る俺にピカチュウは尚も食い下がった。

「今日はやけにしつこいなピカチュウ?」
「・・・サーフィンってスピード感があるんだよね」
「そりゃ、そうだろ」
「僕と並んで乗ってくれたら、君と一緒に走ってる感覚になれると思ったんだ」

地上だと叶わないもんね、だと。

「・・・ピカチュウ」
「何?」

大好物のリンゴを得たような笑み。
いつも振り回しているのは自分なのに、たまに立場が逆転する。

「サーフィンのセンスは?」
「もちろんプロ級だよ」
「グレイトなコーチができちまったな」

肩をすくめて笑う俺に、ピカチュウも笑った。
明日は彼とサーフィンしてくるぜ。
グッドラック!!


+拍手ありがとうございました!



リク・ご要望・ご連絡・なんか一言、なんでもどうぞ★

あと1000文字。