「ネギ君。君と仮契約したいんだけれど、
もちろん異論はないね?」

 フェイトはいつもの無表情でそう告げると、
答えを待つことなくネギの腰を引き寄せた。

「わああ!?」

 あっという間に0になった距離に慌てて、
ネギはフェイトの腕から逃れようともがいた。
が、腕の拘束は堅固で、びくともしない。
それどころか、いつの間にか回された手に頭を固定され、
のっぴきならない状況に陥ってしまう。

「ちょ、ま、待ってよ、フェイト!いきなりなんで…っ!?」

あと数十cmで唇が触れるという近さに動揺を隠せず、
ネギは真っ赤になって当然の疑問を叫んだ。

「君に協力すると言ったろう?それなら、仮契約して
おいた方がいいと思わないかい?」

 フェイトは、ネギがなぜ異論を唱えるのか
分からないといった風に、さらりとそうのたまった。

「そ、そりゃ、言ったけど、でも……。」

「それに、君と仮契約すると、漏れなくレアアイテムが
ついてくるだろう?それも気になってね。」

「ええ!?何その理由!?」

「尤も、仮契約が嫌なら、本契約でも、
僕は一向に構わないよ。」

「ほ、本!?って、わああ!?」

 話は終わりだとばかりに顔を近づけてきたフェイトに、
ネギは慌てて顔を背けた。

あからさまな拒絶に、けれどフェイトは無言のまま、
後頭部に置いていた手をネギの顎にかけると、
有無を言わさず正面を向かせて視線を合わせた。

ほんの数cmまで縮まった距離に、
ネギは耳まで赤くしている。
動揺しまくりのネギと対照的に、
フェイトの顔はどこまでも涼やかだ。

「なぜ、唇というたかが一器官を重ねるだけの
行為にそこまで動揺するのか、僕には分からないな。」

「全然気にしないフェイトのほうが分かんないよ!」

 フェイトの呟きに、ネギは思わずそう叫んだ。

 大体、仮契約の方法なら他に幾らでもあるのに、
なぜ同性の自分に対してこの方法を選んだのか、
フェイトの意図が、ネギにはさっぱり分からなかった。

「他にも方法はあるじゃないか!なんでこんな…っ!?」

「これが一番簡単だからね。それに、
僕は栞さんたちとも、この方法で契約したよ。」

「……っ!?」

 少しも表情を変えることなくそう言い放ったフェイトに、
ネギは一瞬言葉を失った。

「それとも、他の理由が必要かい?」

 僅かに口元を歪めたフェイトは、
そう言いながら顔を近づけた。

フェイトの顔を見ていることが出来ず、
ネギはダメだと分かっていながら、
思わず固く目を閉じてしまった。

真っ赤になってふるふる震えているネギに、
フェイトの笑みが深まる。

「………?」

 目を閉じてしまった以上OKを出したも同然で、
だから仕方ないと、自棄気味に覚悟したにもかかわらず、
その時は一向に訪れなかった。それを不思議に思い、
ネギが恐る恐る目を開けようとした時だった。

「好きだよ、ネギ君。」

「……っっ!!??」

耳元に、囁くように落とされた告白。

弾かれたようにネギが目を開けた瞬間、
フェイトの唇がネギのそれに重ねられた。






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