『約束』

「リィ」
「ん?」
「夜中に出て行くときは、起こして」
「? なんで?」
「なんでも」
「寝不足になっちゃうよ」
「いいから!」
「?」

そんな風に、一方的に、取り付けた約束を。
彼は律儀に守ってくれる。

「子猫ちゃん」
「ん・・・・・・」
「シーク」
「んー・・・・・・」
「行ってくるね」

離れていく温もりに飛び起きた。
覚醒しきらない頭を振りつつ、ベッド横に立つ男を見上げる。
暗闇に浮かぶリィの瞳がどこか満足げに見えた。

「・・・・・・いってらっしゃい」



そう。
それは。

知らぬ間に。
隣から消える気配。
ひとり目覚めた朝の、言いようのない不安と寂しさを紛らわすために。
結ばせた約束。






終わり







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