身長 [クラウドとレノ]




 背は、そう変わらない。
数センチ、いや、数ミリか。
多分、自分の方が高いかもしれないが、そんなことを口にすれば、きっとレノはキレる。

 身長なんて、今はそんなに気にならないが、レノは違うようで、隣に並ぶと、時折、眉間に皺を寄せて、昔はこんなだったのに…、なんてぶつくさ言いながら、手を肩のあたりでスライドさせている。
…言っておくが、そこまで小さくはなかった…はずだ。

「…何だ、お前。さっきから」

 古びた教会。自分たち以外に人の気配はない。
陽の光が入り込み、地に咲く花を照らしている。

「別に…」

 特に何をしにきたわけでもなく、ただの散歩。
エッジから旧都市であるミッドガルの廃墟まで足を延ばしてみただけに過ぎない。
 以前はズキズキと痛んでいた腕も痛まない。
身体を蝕んでいた奇病も消え去って、至って平和な日常だ。

「何でもねぇならジロジロ見てんな」

 キモイ。
可愛げのない台詞を吐いたレノ。
目線はほぼ同じ。
見慣れた表情。

 見るなと言われたが、そのままじっ…と顔を見ていると、眉を潜めたレノが首を傾げる。
そんなレノの肩をやんわり掴んで、座れとばかりに背後にあった瓦礫に押しつけるように座らせると、ぽかんとした表情で見上げられた。

「何がしたいんだ?」
「いいから少し黙ってろ」
「はぁ?」

 見上げてくる緑がかった瞳。
見下ろしたその表情も、見慣れた…とまではいかないが、何度も見ている。

 少し考えて、それから、その場にしゃがみ込む。
今度の目線は自分が見上げる形。
 動きを追うように、レノの緑がかった瞳が見下ろしてくる。

「クラウド?」

 レノが首を傾げると、赤い髪が揺れた。
しゃがみ込んだまま少しだけ距離を縮めると、覗き込むような形になる。

 唐突に距離が縮んで、無意識にレノの身体が後ろに引いたが腕を掴んで、それ以上、後ろへ引かないように固定。
そのまま、じ…と、表情を覗き込む。

 何がしたいのかわからないとばかりに瞬きをしている表情。
これは、滅多に見ることができない表情だ。

 ふ…、思わず、笑みが零れる。
もちろん、レノは何故、笑われたのかが分からず、眉を潜めた。

「たまには、いいな」
「…は?」

 覗き込んだ顔をぐっ、と近付けていくと、何をされるのかを悟ったのか、ビクリ掴んだ腕から身体が揺れるのが伝わった。
けれど、逃げられないように腕を引き寄せる。

「おま…ッ、んっ」

 抗議の声が上がる瞬間。
空いているもう一方の手で、赤い髪をした頭を掴んで声を塞ぐ。

 余程、驚いたのか。
大きく身体が揺れて、グッ、と。
服を掴まれた。

 暫くしてから唇を離すと、覗き込んだ表情は真っ赤で、思わず苦笑。
抗議の声をあげたいのか、パクパク口を動かしているがなかなかレノから声は上がらない。

「伸ばしたいなら別に構わない」
「何が!」

 立ち上がって、瓦礫に座り込んだままのレノを見下ろすと、怒鳴るような声が返ってきた。
分かり難いようで、分かりやすい、レノの行動。

「俺は別にアンタより低くても構わないから」

 手を伸ばし、ぽんぽん赤い髪の頭を叩く。

 一体、何の話だ。
そんな表情で、真っ赤にしていた顔を、一瞬、ぽかんと呆けさせ、それから、頭の上に乗せられている手を眺め。

 ようやく、意味を悟ったレノは。

「ぶっ殺す!!」

 思っていた通り、真っ赤な顔で怒鳴って、立ち上がった。


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別に標準身長なんだろうが、変わらない身長のこと気にしてると可愛い。






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