「この身の哀れが染みる季節になったね」
「秋が物哀しいっていうお話ですか?」
「あまりに月が美しいのでね」
「友雅さんは本当に月が好きですね」
「それほど思いをかけているつもりもなかったのだけれど。
神子殿に逢ってしまったからかな」
「私ですか? 私と月がどうして結びつくのか、さっぱり
わかりません」
「君は月から来た姫と同じだもの。私と違う、異界の姫だ。
そうしてただ月光のように優しく添っていてくださるから
いいのだよ」
「何もわからないから、側にいるだけかもしれないです」
「それでもいいんだ。独りこの世を別れ黄泉路に立つ夕べ
にも、送ってくれるのは月の影だと聞いているよ」
「さびしい時も側にいたら、少し気持ちが楽になりますか」
「あなたがここにいることこそが、私の何よりのなぐさめ
だよ。ありがとう。月の姫」
「友雅さんが、そうやって笑って抱きしめてくださる方が
ずっと私の支えになってます。それに私は、月光のように
ただそこを照らすだけより、ちゃんと友雅さんに触れて
一緒に泣いたり笑ったりしたいです。欲張りでしょう?」
「いいや、そんなあなたを独り占めしたい私が何より欲深
らしいよ」
輝く月に照らされて、ふたりはそっと微笑みあった。
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