「…平助」
「ん?」
「ちょっとさ…俺の前、歩かないでくれない?」
「え!?」


前を歩くなって、それはちょっとひどくない?
恋人じゃなくても、仮にも僕はこの人に告白したわけで。

好かれるように頑張って
少しでも一緒にいれるように努力して
今だってなんとか一緒に行く約束をした甘味処に向かって歩いてる途中なのに。


「なんか…ダメ」
「なんかダメ!?何それ、なんか傷つく!」
「後ろ歩いて、後ろ」


聞きましたかみなさん。
健気に頑張ってる俺にこの一言。
これはいじけるしかないでしょうって。


「わかりました!後ろ歩けばいいんでしょー!」


愛しい新八っつぁんの横を通り過ぎて、言われたとおりに後ろを歩く。
頑張れ俺。
負けるな俺。
新八っつぁんだっていつか振り向いてくれるさ!

なんて自分を励ましつつ、しばらく歩いてました。
すると新八っつぁんが急に止まって、平助、と俺の名を呼ぶではありませんか。


「なーにー?」
「後ろ…」
「…ぱっつぁん」


まさか後ろも歩くな、なんて言わないよね?
そんないじめ平助くん許しませんよ?
って言葉を笑顔に乗せて新八っつぁんに届けてみる。


「…なんでもない、です」


そこで止まるってことはやっぱり言おうとしてたんだな、と思ってちょっと悲しくなる。

平助くんは自分が思ってるほど新八っつぁんに好かれてはいないのでしょうか。
告白してから、それなりに想いが伝わってる気がしてたのですが。

僕の気のせいだったんでしょうか。


「ッ…やっぱダメ!」
「新八っつぁんー」
「ごめん…後ろ、やだ…」


前も後ろも歩くなって。
新八っつぁんとは一緒に歩くなってこと?

…あれ?
それとも、もっと別の…


「ねぇ、新八っつぁん」
「え?」
「となりは歩いてもいいんだよね?」


となりは歩いちゃダメって言われてないし。

新八っつぁんのとなりに立って歩く。
見上げてくる新八っつぁんに笑いかけて、これでいいんでしょ、って聞いてみる。


「ッ…ダメ!//」
「もう遅いですー」


もう言うこと聞いてあげない。
だってわかっちゃったから。

前を向いて、ねぇ、ってぱっつぁんに話しかける。


「前も後ろもダメなのはなんで?」


そう聞いたら、大きい目をさらに大きくさせて。
しばらく視線をさまよわせた後、まっすぐに俺を見る。

あぁ、これは本当にわかってない時の顔だ。
自分のことなのに、わかってないんだ。


「…落ち着かないから、かな」
「落ち着かない、ねぇ…」
「ホ、ホントだからな!?」
「うん、わかってるよ」


わかってる。
考えてみたら、それしか答えが見つからなかったんでしょ?

でもね、俺、わかっちゃった。
言ったら違うって怒るだろうから、言わないけど。

見つけた理由が嬉しくて、頬も勝手に緩んじゃうってもんですよ。


「なんかムカつく…」
「はいはい、そうですねー」


てきとうに返して、俺より少し小さい手を取って、歩き出す。


「なっ…平助!放せ!!//」
「ダメー」


即却下したら、怖くない目で俺を睨んで、もう知らないとでも言うようにそっぽを向いた、俺の好きな人。


ねぇ、新八っつぁん。

前を歩かないでほしいのは、視界に映る俺が気になってしょうがないから。
後ろを歩かないでほしいのは、後ろからの俺の視線と足音が気になってしょうがないから。

俺の存在が
気になってしょうがないから。
違うかって聞いたら違うって怒るかな?怒るよね。


ねぇ
新八っつぁん?

もしかして俺、脈ありですか?





拍手ありがとうございますですー。

あっはっは。新八君てんてこまい(ぇ
なんか平助視点書くの楽しくなってきた!笑



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あと1000文字。