冬のある日の出来事

冬のある日の出来事

「寒い」
「俺は寒くない。どちらかと言えば、暑い」
「さーむーいー!」
かみ合わない攻防戦を続けているのは、彼の背中に寄りかかりながら首に手を回す私と、可愛い彼女が寒いと訴えているのに素知らぬふりをして本を読み続けている彼こと、徹琉(てつる)。

恋人同士で、可愛い彼女が寒いと甘えているのだからここは彼として抱きしめて温めてくれてもいいはずなのに、それを暑いと言って読書をやめないというのはどういうこと?

少し強めに首に回した腕を強めても、揺さぶっても返ってくる返事は同じ。
「暑い」

うー、そんなに彼女に冷たくするのなら、いじけるしかなくなるんだからねっ!

するっと、徹琉の首に絡ませていた腕を滑らせ立ち上がると、歩幅を大きくしながらそばを離れた私は寝室へと向かい、寒さに冷たくなっているベッドの中へと潜り込んだ。
けれど、徹琉は私の後を追いかけてくる気配はなく、いまだに同じ体勢で読書を続けているのだということが分かる。
それが私の怒りに火をつけ、布団の中へと身体を潜り込ませるけれど、次第に悲しくなってきてしまった。
久しぶりにゆっくりと会うことができたというのに、何も本を読むことはないじゃないかと。
けれど、待てど暮らせどドアが開かれることはなく、さらにその事実が私を物悲しくさせてしまう。
そうなると、私にできることといえばふて寝しか残っていなくて、結局気がつけば意識は遠のき、布団の奥に入り込んだまま眠ってしまっていた。









「アツ、アツ、湊理(あつり)」
髪をなでられる感触と耳元で優しく囁かれる自分を呼ぶ声に、意識がゆっくりと眠りから覚めていき、眠りが覚めるようにゆっくりと開かれる瞼。
次第に瞳に映し出されるのはどこか楽しげな表情を見せる徹琉。
「遅い」
意識が覚醒したと共にこぼれてくる私の声は、どこか弱々しい。
それでも、髪をなでる手の動きが優しくて、自然とベッドの横に座り込んでいる徹琉に身体をすりよせてしまう。
「アツ、そんなに淋しかった?」
からかうように聞いてくる徹琉に対し素直に淋しかったというのはなんだか癪で、それでも、淋しかったのは本当のこと。
だから、
「淋しかった」
その想いを素直に口にして、徹琉に身体だけではなく腕を伸ばす。
「本当にこういう時は甘え上手だな」
伸ばした私の腕は徹琉の身体をとらえ、また、徹琉の腕は私の身体をとらえた。
触れ合うことができた身体は温かみを増し、私をほっと安心させる。
冬になり寒くなるとどうしてこんなに人肌が恋しくなるのか。
それは、人の温もりを知ってしまっているからだと私は思う。
だから、無性に徹琉が恋しくなってしまうのだと。
「さっきは甘やかしてくれなかったくせに」
「言ってただろ?どうしても今日中に読んでおかなきゃいけないって。
でも、アツが我慢してくれたから読むことができたよ。
だから、今から甘やかしてやるよ」
甘やかしてくれると言いながら徹琉は布団に潜り込んだままだった私の隣に身体を潜り込ませ、気がつけば私は徹琉を見上げている状態になっていた。
そして、重ねられる唇に次第に身体の熱が高められ、吐息が唇が離れたと同時に口から吐き出される。
「もう寒くなくなってるんじゃないのか?」
「っそんなことない。温めて」
スカートをめくり、下着に隠されていた秘部を徹琉の手が器用に探り、私の感じやすい場所を迷いなく探し出し、指をゆっくりとそして、強弱をつけながら動かしていく。
次第に吐息ではなくこぼれだす声。
それは、わざとではないのに甘えたような声になってしまい、感じていることを知らせるかのように徹琉の指を濡らす愛液。
隠しようがないほど濡らしているのに、それでもまだ流れ続けているのは徹琉が秘部だけではなく、胸の突起を舌で転がしたかと思うと噛んでピリッと刺激を変え、空いている手も私の身体を余すことなく触れ、快感を生み出すからだ。
「アッ、んん…はぁっ」
「そんなに気持ちいいんだ」
「だって、久しぶり…だし。
徹琉を、感じたかったから…」
「だから、こんな時ばかりどうしてそう素直かな。
押さえがきかなくなるだろ?」
「なんで?押さえないで…。
もっと、もっと欲しがって、私を」
「まったく、欲しがってるのはどっちなんだか。
後悔するなよ、その言葉」
先ほどのキスと違い、荒々しさを見せながらも深く絡められ口腔内を動きまわる舌はどこか優しくて、それでも、秘部に触れている指の動きは容赦なく私を責めたて、霞がかる意識の中私はイってしまい、体中から力が抜けて力がすぐに入りそうにはなかった。
そんな私の状態が分かっているはずなのに徹琉は私と身体の位置を器用に逆転させてしまい、私は徹琉の身体をまたぐ体勢になる。
気がつけば器用に脱がされてしまっていた私の洋服はベッドの下に落とされ、自らの肌を徹琉に見せてしまっていた。
それなのに徹琉は、上半身は裸でもズボンははいた状態だ。
「ねぇ、脱がせてよ」
「え、私が?」
「だって、そうしないとアツが欲しいものはいつまでももらえないことになるわけだし」
「ずるい、その言い方。
私だけがエッチしたいみたいじゃない」
「とらえ方は自由だけど、どうする?」
しっかり自分もズボンを膨らませておきながら、私だけ欲しがってるみたいに言われるのは納得できないものがあったけれど、それでも、今の状態のまま時間が過ぎるのはつらいことに変わりはない。
そして、こんな言い方をするときには私が折れなければ辛いままになってしまうのは分かっている。
だから、ゆっくりと徹琉のズボンと下着を下ろし、欲しくて仕方ないものを自ら身体の奥へと招き入れ、ゆっくりと動き始める。
「はぁぁ、んんっ…っ」
「ほら、動きがゆっくりになってきてるぞ。
それじゃ、欲しいところに届かないんじゃないのか?」
「だっ…て、動けないよぉ。
徹琉も、ね。んんっ!」
「では、ご期待にこたえないと、な」
「ああっぁぁ!」
重なり合う2つの腰の動きは、私の中にある徹琉の物が奥深くへと入り込み、それだけではなく壁を擦り弱いところへ到達してしまう。
そうなると、私の動きは貪欲になり、もっともっとと快感を追い求め喘ぎ声は大きくなっていく。
次第に私だけではなく徹琉の息も荒くなり、お互いが同じ高みへと向かっていることが身体だけではなく感覚でも共感してくる。
高まる熱は徐々に熱さを増し、快感を最高潮まで生み出していく。
高まった快感を得た後は、身体じゅうから力が抜け徹琉に身を任せる。
整えようとしている呼吸を待つことなく、体勢をバックへと変えられ冷ますことができない熱をさらに高められることになって、徹琉が言った言葉を思い出しながら再び快感の渦の中へと放り出されてしまう私がいた。








「暑い」
「アツが寒いって言ったんだろ」
「言ったけど、ここまで暑くしなくてもよかったもの。
明日仕事なのに」
「俺も仕事なんですけど」
「男と女じゃ体力が違うんです!」
「そうか?
アツの方が体力ありそうだけど、ということで、もう1回温まろうか」
そう言う徹琉の顔はやっぱり楽しげで、私を後悔という渦の中にも放りこむつもりのようだ。

仕事なのにー!

そう思いながらも、やっぱり受け入れてしまうのは人肌というよりも、徹琉が恋しいから、なんだよね。

+おわり♪+






久しぶりのお礼小説更新でございます。
今回は久しぶりということで、らぶえっちのえっちに力を入れてみましたっ!
何分、かなりご無沙汰な内容なだけに思い出し思い出しで書いてしまいました。
そして、新キャラのカップル。
この2人は書きかけの話に出てくるカップルです。
なので、書きかけの話のその後となります。
書きかけの話を早く書けよ!と自分でも思うのですが、時間もですけど書きかけては止まり、なんていうのを繰り返しておりまして…。
ぼちぼち書き進めますので、気長にお待ちいただけるとありがたいです。

H22.10.7 マチ拝
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