とある楽曲をイメージしてます。

あくまでイメージです(重要)



私とレンは幼い頃からピアノを習っていた。

レンと一緒じゃなきゃいやだ、という理由で特に興味があるわけでもなく始めたピアノだったが、周囲の評価は違った。

天才。それが私に付きまとう評価だった。

次第にピアノへの拘束時間が長くなり、隣で一緒にピアノを弾いていたレンの姿も見えなくなった。

レンと一緒じゃなきゃピアノなんてやる意味ないのに。



ある日ピアノの練習中、部屋のシャンデリアが落ちた。

頭に直撃はしなかったもののシャンデリアは右腕、特に右肩に強く当たった。

駆けつけたレンがすぐに医者を呼んでくれたが、神経がわずかに傷ついたらしい。

傷が治り包帯が解かれた腕は、違和感があり自分の腕じゃないみたいだった。

そして右肩に痛々しく残った紫色の痣。

私はもう以前のようにピアノは弾けなくなってしまった。



不運な事故。そう言って周りは嘆いた。

けど、私は知っている。

あの日シャンデリアが落ちてきたのは偶然ではない。

レンがネジを緩めたのだ。

その光景を私が見てしまったのは偶然だけど。

右肩に広がる紫色の痣。それはまるで蝶々のようで。

その痣を見るたび私は、嬉しくなった。



事故以来触れていなかったピアノの前に立つ。

部屋の隅に寄せられたピアノは薄っすらと埃を被っていた。

蓋を開け、以前のように弾いてみようとした。

だけどそれは美しい音を奏でることはなかった。

そして私の目から涙が一筋だけ頬を伝った。



「リン」

振り向くと、そこにはレンがいた。

レンは私の側に近寄ると、そっと私を抱きしめて、小さくごめんと呟いた。



「僕がリンの右腕になるよ」

そう言ってレンは私の痣に優しく口付けた。

あの日、ネジが緩んでいるのを知っていてピアノに近付いたのは私。

ピアノが弾けなくなれば、またレンと一緒に過ごせると思ったから。

こうなることを望んでいたのだ。

ありがとう、と言って満足した私はレンにキスをした。

そう、私は狂っているのかもしれない。





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