☆普通にザクレノ





 バババ、

 小さく揺れる機体の中、ザックスがちらりと横を見るとレノが数多のボタンやレバーが並んだ計器をリズムよくパチパチ鳴らせて操作していた。

 時折、ヘッドフォンで本部と連絡を取っているのか、暗号混じりの会話が聞こえてくる。

 レノはヘリの操縦が好きだ。前に聞いたことがあるけれど、車よりも単車よりも。仕事柄、機械操縦の技術をその他多数会得しているようだけれど『ヘリが1番スキだぞと』といつか嬉しそうに微笑みながら話してくれたのをザックスは思い出していた。

 その記憶通り、隣にいるレノの様子は、ザックスには頭が痛くなりそうな複雑な操作盤を前にしても見るからに楽しげだった。

 けれどだからと言って…

「レノ」
「…。」
「レノ、レノッ!」
「……チッ、静かにしてろよと」

 チッて!

 あからさまな舌打ちにかなり傷付いたザックスはガックリ肩を落とした。

 いくら任務中とはいえ、いくらヘリ操縦中とはいえ、そしていくら二人きりじゃないとはいえせっかく隣どうしに座っているのだから少しくらい話したってバチは当たらないと思うぞ…!?

 今まで意識的に気にしないようにしていた後部待機席の兵士達の話し声が急に大きく聞こえてきた気がする。

 本来、レノとザックスは別任務だったのがこうして同伴できているのは偶然が成せた業だった。たまたま、ザックスが乗り込むはずだったヘリに不具合が起きたところに、たまたまヘリポートを通りかかったのがレノであり、そのレノはたまたま、ザックスと同方向の任務地に出発するところだったのだ。そしてたまたま、レノのヘリに空席が僅かにあったから、数人の兵士と共に同乗させてもらうことになったのだ。ちなみに、ザックスの部隊の残りの人員は別機ですぐ後ろを飛んでいる。

「二、三人あぶれたくらいならなんとか乗れたんじゃねぇのかよと」

 後方のヘリを顎でしゃくりながらレノがそう言ったのにザックスが苦笑した。

「ない話じゃないだろ?最後の藁、じゃないけどほんと積載限界ギリギリだったんだって!」
「でも、それで何でお前が真っ先にこっち来てんだよと」
「一応、部隊長だろ」と疑わしげな目を向けてくるレノにザックスは真顔で即答した。
「一緒にいたいから!」

 そして間髪入れずに身を乗り出し、音を立ててレノの頬にキスをした。

「~ッアホ!」
「わ、冷たっ!!」

 それでも見るからに楽しげに、ニヒヒと笑いながら脚を組んだザックスに舌打ちをしながらレノは急いで後部座席と、計器に目をやった。今の不意打ちで一瞬メーターが揺れたが問題はないようだ。何より、後方にいる一般兵に今のを見られたら赤っ恥もいいところだ。兵士達に特に反応がないことにもホッと息をつき、文句の一つでも言ってやろうとしたところにザザッとインカムに通信が入った。

 レノはその内容に短く了解の意を伝えながら一言二言会話を交わしたが、ふと思い付いた考えに数瞬瞬きをすると、ニヤリ、口角を上げる。

「なー、レノ。この任務、戻りいつ?」
「…バカ犬。ちょっと黙ってろよと」
「?何してんの」

 今まで触れていた場所とは違うボタンを人差し指で連打するレノにザックスが首を傾げる。

「ザックス、任務に若干の変更有りだぞと」
「へ?」

 ボタンから手を離したレノがニコリと微笑みながら振り向いたのにザックスは間の抜けた声をあげた。

「な、何だって?」
「お前の合流地点だけ予定より手前になったんだぞっと。そろそろポイントだからベルト外しとけよと。」
「げ、もう着いたのかよ!ってかベルト外す?締めるんじゃなくて?」

 突撃任務でもない限り、着陸時にシートベルトを外せなんて不思議なことを言ってくるレノにザックスは首を傾げた。それには特に答えないレノに疑問を抱きつつ言われたとおりにベルトを外すと同じタイミングでヘリのモーター音が僅かに低くなった。少しの旋回後、地上に近づくにつれて霧が発生しているのか視界が悪くなるのにザックスは表情を引き締める。
振動もほぼなく、降下をつづけ、靄の間からついに高層ビルの頭が見え始めたところでレノがさらりと言葉を発した。

「よし、お前ここで降りろっと」
「任せろ!!…………って、ちょ、は!?」

 目の眩むような高いところから飛び降りること事態は初めてじゃない。が、たった今要求されたレベルの高さにザックスは絶句した。

「れれれレノさんっ!いくらなんでも…これはちょっと!」

 せめて!せめて視界さえ良ければ何とかなったかも知れないけども!高層ビルのてっぺんが足下、そしてこの視界の悪さではさすがにヤバいって!

 声にならない悲鳴を上げ、わたわたしていると、グッ、と胸ぐらを掴まれた。

 チュッ

「…!?」

 軽い音がしたかと思えばぬるりと唇を割って入り込んだ感触にザックスは驚きつつも反射的に舌を絡める。その間、徐々に重力が機体の右側へ傾いていくのを感じたが大きく口を開けて角度を変えて更に深く絡められる舌から気をそらすことなどできなかった。

「は、レノ…」

 たっぷり、間を置いてから糸を引いて離れ、潤んだ瞳で見つめてくるレノに見蕩れた。後部座席の兵士たちのざわついた声と視線をびしびしと横顔に感じたが、それはもとからザックスの知るところではない。

 今やかなりの斜度のある機体で、ザックスは座席に片腕をついて体勢を保っていたが、それを助けるように力一杯胸ぐらを掴んでいたレノの手にそっと手を重ねた、そのとき。ザックスのほぼ真上で壮絶に色っぽい顔をしたレノが口を開いた。

「大丈夫だぞっと。お前なら…できる。」
「?れ、レノ…?」

 誰もが聴き惚れるような男前な声音でそう言うとレノは反対の手を操作盤に伸ばした。

「じゃあなっと★」

 それと同時に、グワッとザックスの背後の扉が開く。そして胸ぐらをポン、と軽く、押された。

「ちょ……まさか!!ぎゃぁああ!!!」

 機体を傾けたのはこのためだったのかと、思ってももう遅い。

 天国から地上へ、ザックスはまっさかさまに、おちていった。





「……さ、さすがにビビった…。」

 地上で半ば微妙な体勢でぶら下がりながら涙目のザックスの横に立ったのはスキンヘッドの大男、レノの相棒、もとい、ルードだった。

「……レノと付き合うには相応の覚悟が必要だ。」
「…………ソウデスネ。」

 地面との激突からザックスを助けたのはルードが発射したネット弾だった。三重のネットに絡まったザックスは怖々上空を見上げる。すると先ほどまで乗っていたレノの操縦するヘリが目と鼻の先の空間に腹を見せながらゆっくりと降りてきた。チカチカと、腹についたランプが何か意思を告げるように光ったのを見たルードがさも楽しそうに口端を上げた。

「ふ、悪戯が過ぎるぞ相棒。」

 機体が傾く前、レノが操作盤のボタンを連打していたのを思い出しながらザックスが項垂れた。

「ルードへの伝言だったのね…」

 任務変更というのも演出のひとつなのかと思いつつ、ついに地面に降り立ったレノが操縦席から爽やかな笑顔で完璧な敬礼をキめてくるのに力なく、微笑み返した。








アブノーマルなMとS>>>Sっ気なあの子に首ったけ





かっこつけてるレノ以上にかっこいい奴はいない^w^!








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