ありがとうございました!




[ 世の名言 ]


「さぁ文次郎。その首を縦に振って、今持っているその菓子を私に手渡してしまえ」
「……お前な」

 呆れたように文次郎は仙蔵を眺める。にこにこと笑みを浮かべ、猫なで声で右手を差し出す彼。その左手には火矢が載せられている。

「そこまでして食いたいのかよ、これ」
「いや。食べたいがそこまでじゃあない」
「なら、その左手はなんだ」
「これか?なに、大したことじゃない。棍棒を携え、穏やかな言葉で……なんてな。交渉にはこれが最良なのだと小耳に挟んだものだから」

 棍棒よりも火矢のが馴染んでいるからこちらにしたのだ、と先ほどの笑みと種類を変え、にやにやと笑いながら彼は言う。文次郎はため息を吐くと、もう一度呆れた顔を彼に見せた。

「お前の猫なで声は棍棒よりも怖い」
「そうか、それは良いことを聞いた。では次の予算委員会で使うことにしよう」
「ネタバレしてんだから、もう無駄だ」

 言いながら、文次郎は持っていた菓子をひょいと口の中に放り込んだ。

「あっ!貴様!」
「棍棒があっても上手くいかねーこともあるみてぇだな」

 ざまぁみろ、としたり顔を浮かべた文次郎へ、仙蔵は顔をしかめて未着火の火矢を投げつけた。


【棍棒をたずさえ、そして穏やかに話せ】 セオドア・ルーズベルト





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