拍手ありがとうございます!お礼にイナイレの吹染小説をどうぞ。だいぶ遅れましたがバレンタインです。吹染が同じ学校だったり染岡が女の子だったりと色々超次元ですので気を付けてください。


 作ってしまった。
 「何を」と聞かれれば「チョコを」だ。
 今日はバレンタインデーである。男も女もそわそわする日。
 本当は作るつもりなんてなかった。でも昨日たまたま通った店のバレンタインコーナーにあった、チョコクッキーの手作りセットがわりと簡単そうだったのでつい買ってしまったのだ。
 渡す相手はもちろん吹雪だ。
 しかし吹雪は他の女子から大量に貰うだろうし、俺から貰って嬉しいのだろうかという疑問もある。
 つまり、とても渡しづらいのだ。
 普段の俺は菓子なんか作るキャラじゃない。吹雪は優しいからきっと笑顔で受け取ってくれるだろう。でも内心、変に思われたら?
 そう思うと怖くなってチョコを渡すどころじゃなくなる。
 色々考えていたらとっくに授業も部活も終わってしまっていて、渡すタイミングをすっかり逃していた。
 しかも考え事をしていたせいで練習に全く集中できなかった。最悪だ……。
 吹雪は案の定、大量のチョコを貰っていた。やっぱり俺のなんていらないんじゃないか。
 帰り支度を済ませ、挨拶をして歩いて行くとチョコが入った紙袋を二つ持った吹雪が立っているのが見えた。

「染岡さん、調子悪そうだったけど大丈夫?」

 俺に気付いて走り寄って来た吹雪がそう言った。

「別に、平気だ。話そんだけならもう帰る。じゃあな」

 嫌でも目に入るチョコに苛々する。このままだととんでもないことを口走ってしまいそうだ。
 立ち去ろうとすると呼び止められた。

「待って染岡さん!本当はこれを渡そうと思って待ってたんだ。はい」

 渡されたのは可愛くラッピングされた箱だった。有名なチョコレートメーカーのロゴが入っている。
 驚きのあまり口をあんぐりと開けてしまった。きっと間抜けな顔になっているだろう。

「なんで……?」
「逆チョコだよ。いつもお世話になってるから。それに海外では男性が女性に贈り物をする日だからおかしくないでしょ」

 笑顔が眩しい。胸が高鳴った。嬉しい。けど、もしかしたら他の女子にもあげてるんじゃないだろうか。
 そんな俺の考えを読んだかのように付け加えた。

「染岡さんにだけだよ」
「……っありがとな」

それしか言えなかった。受け取ってバッグにしまおうとすると自分のチョコを見つけた。
いまなら渡せる気がする。

「吹雪、俺からもこれ……」

 今度は吹雪が驚く番だ。

「これ、僕に? もしかして手作り……?」
「あぁ、美味しくないかもしれないけどな」

 やっぱり少しきまりが悪くて早口で言う。吹雪は何も言わない。変だと思っているのだろうか。
 渡したことを後悔しそうになったとき、いきなり吹雪が叫んだ。

「ありがとう!!!」
「うおっ」
「本当にありがとう! 貰えるなんて思わなかったから嬉しいよ! しかも手作りなんて……! 美味しいに決まってるよ! 大切に食べるからね!!」

 あまりの喜びように嬉しさよりも戸惑いが先にきた。
 そんな俺に満面の笑みで吹雪は言った。

「僕は染岡さんが大好きだから染岡さんがくれるならたとえ5円チョコでも嬉しいよ」

 さらっと凄いことを言われたような気がする。顔がだんだん熱くなってきた。
 辺りが暗くて良かったと心底思う。今の俺は絶対に情けない表情をしている。
 吹雪は顔色一つ変えず、俺のチョコを大事そうに持って眺めてからバッグにしまった。

「染岡さん、一緒に帰ろうか。もう暗いし女の子1人じゃ危ないから送るよ」
「おう」

 別に1人でも平気だけど、女の子扱いしてくれるのと、チョコが他の女子と同じ袋に入れられなかったことが嬉しくて、気恥かしくて、何も言えなくなってしまう。
 渡して良かった。隣を歩く吹雪を盗み見ながらしみじみ思った。
                           ~END~



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