眠れないの。


じゃあ、手を握っていよう。


体が震えるの。


じゃあ、抱き締めてるよ。


寂しいの。


じゃあ、朝まで頭を撫でてるよ。


苦しいの。


じゃあ、背中を撫で続けてあげよう。


どうしたら良いかわからないの。


じゃあ、目も耳も塞いでいてあげる。






「柩は、優しいよな。」


ふと口から出た言葉に新弥を見ると、顔だけこちらに向けて笑っていた。


「俺は、甘やかしてるつもりないけど。」


いや、違くて、と今度は体を向けた。


「甘やかすのと優しいのは違うだろ。」


どこが違うのか問うたら、違うったら違うんだと根拠のない解答。


「俺は新弥が大事なだけ。」


ああ、ほら、それが優しさだ、と便乗した答え。


「わかんない。」


「ん、俺がわかってれば良い。」


握り締められた手が、頬に導かれた。


「要は、離れないってこと。」


ますますわかんないよ馬鹿、と頬を指先で撫でた。



その行為が優しさなんだと気付いたのは、ほんの一瞬後だった。





END


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