美味しい夫婦喧嘩(kzhy)
(お題配布:反転コンタクト様)



 いただきます、と口を揃えて言ったあと、スプーンが皿の上を滑る小気味いい音がそれぞれからした。
 掬ったそれを頬張る。
 口の中に広がる辛味を舌の上で感じながらもぐもぐと咀嚼し、第二陣をスプーンで掬ったところでKAZが口を開いた。
「……からぁい」
 ごくん、と咀嚼していたものを飲み込んで、隣のKAZを見やる。
 べ、とヒリヒリするのか犬のように舌を出していた。
 そんな姿を見て、はぁとひとつ溜め息。
「あんな、KAZ」
「あに?」
 舌を出したままで話すKAZ。かわええからそれは別にいいけど。
「それ甘口やん」
 スプーンでKAZの皿を差す。KAZもそれに釣られて自らの皿を見下ろした。
「違うよ~、これ絶対甘口じゃないよ。間違えたんだよきっと」
「お店に文句つけないの」
 ぴしゃりと子どもを叱るように言うと、こちらも「そうゆうわけじゃないよ?」と悪さを見逃してもらうような言い草である。
「大体カレーなんやから少しくらい辛くったって当たり前やん」
「んーそう言われてみればそうかもねぇ」
 カレーをチョコレートとか生クリームだとでも思ってるのだろうか。
「甘いのがええの?」
「甘口が好き」
 そう言って、KAZはお冷やを口に含んだ。
 その様を見ながらスプーンをカツカツと皿に足踏みさせて、考える。
 ――甘口、ね。
「じゃあ俺とキスしよっか」
「カレーは?」
「カレーよりKAZが食べたーい」
 スプーンをほっぽってKAZに抱きつく。
 寸前で、目の前に座るju-kenが口を開いた。
「あにぃ、そうゆうのは二人っきりのときにやってほしいなぁ」
 その一言で、他のメンバーもいることを思い出す。
 ジト目のju-kenに、笑っているArly、なぜか目を逸らして照れ顔のJINさん。
 テーブルの向かい側に三人揃ってスプーンの動きを捉えてこちらの様子を見ていたようだ。
「やだ、覗かないでくれる?」
「めっちゃオープンビューなんですけど!」
「てか見せつけてたんやけどね」
 ねー?とKAZに同意を求めると、「ねー……?」と分かってるんだか分かってないんだかよく分からない返答。
「どう?ムラムラきたやろ?」
 ふふん、と口の端を上げて不敵に笑ってみせる。
「いらん世話っす!」
「もっと激しいのが見たいなぁ」
「……ごちそうさまです」
 笑いながら言うju-kenとArlyに反して、照れながら小さい声で呟いたJINさん。

 ――ああ、こんなことやっとらんと早くカレー食べたいなぁ。




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