ありがとうございます!
御礼
drrr!! 正帝





日常、当たり前、変化がない。
それが嫌だった。
でも、日常であったこの場所でくすぐったい事。
その瞬間に色も想いも変わった。



『El Via Lactea』



「うっわ~、久々に来たけど、ホント何もねぇなぁ」

隣でぼやいている正臣本人が来たい(帰ろうか)って誘ったっていうのに、
そんなことはちっともお構いなし、というかそれ自体を忘れてしまっているように
見るものすべてに否定的または面白がって次々に口にしている言葉を僕は聞き流す。

その横で僕といえば、
懐かしい…という感慨にふけるような想いは一切なく、
ただ、ここで暮らしていた時のことを思い出していた。
変わらない日常が嫌で非日常を探してネットを泳いだり、
正臣とチャットをしていたその日々のことを。


周りでは蝉が鳴き放題で、暑さを助長していた。
駅から僕の家まで歩いて移動する。
その間もずっと横で喋っている正臣のパワーはどこから来るんだろう?
なんて思いながら、いつものことだし、気にしないでおいた。
けれど、さすがの正臣も家に着くまでのあと少しの所で
暑さにまいったようで黙ってしまった。
しょうがないな…と「正臣」と声をかけて渡したスポーツドリンクを
彼はガブガブと一気飲みする勢いで喉に流し込んだ。
あと少しで空になるはずだったスポーツドリンクは深さ5cmほど残って戻ってきた。
僕の予想、予定では正臣が全部飲みきるはずだったんだけど…。

予想外に返ってきた中身のあるペットボトルを数秒見つめた。
隣では少々の荷物を抱えた正臣が「あ゙づい゙・・・」と言いながらも足を進めている。
『ありがとう』と心の中で言いながら、
飲んだ残りのスポーツドリンクはぬるかったけど、僕の喉を十分に潤した。


さ、家についてからは田舎のお決まりパターンのそうめんにスイカ。
それでも何だか楽しかったし嬉しかった。
なんだろう、社会人になって田舎に帰省する人たちってこういう感じなのかな。

僕の日常は今は池袋にある。
以前日常だったこの場所はもう非日常ってことか。

そんな風に思っていたら、ペトっと頬に何かがくっ付いた。
手で取ってみるとそれはスイカの種。
勿論、横でニヤリと笑っているのは正臣。
高校生にもなって……。
暑さと馬鹿さ加減にクラクラしながら、非日常を楽しまなきゃ損だ!
ププププっと4連発でスイカの種をお見舞いしてやる。
あんぐりした表情の正臣にしてやったりと得意げな僕。
夏だし、馬鹿になった者勝ちってことにしよう。

暫く子どもの頃みたいに種飛ばしをして、笑いながら畳の上に寝転がった。
蝉の声と扇風機の回る音と僕たちの呼吸。

静かだ。


そういえば、正臣に捲くし立てられながら連れてこられたけど、目的って??
大部分は聞き流したけれど、最大の目的は秘密だと言っていた。気がしないでもない。

「ねぇ、正臣」
「んあ~?」

正臣は隣で疲れたのか何なのか目を瞑って寝転んでいる。

「言ってた最大の目的って何なの?」
「ん~・・・・秘密」
「・・・・あ、そう」

まぁ、正臣のことだから、飛び切り吃驚するようなことはないに違いない。
それならいいか。
僕も同じように目を瞑る。
蝉の声はどんどん小さくなって、僕はいつの間にかそのまま眠ってしまった。


遠くで自分を呼んでいる気がする。
けれどそれはすごく迷惑で、僕はまだこうしていたいのに…。
「うるさい」そう本当に口にしたようなしていないようなわからない状況の中、
体を揺さぶられる。
はっと気がつくと、電灯の下、正臣が僕を見ながら
「オマエって寝起き悪かったっけ?」と何やら複雑そうな顔をしていた。

「あ、ごめん。すごく気持ちよかったから、
 邪魔されるのが嫌だったんだ。正臣ごめん」
「いや、別にいいけどさ。帝人に『うるさい!』なんて
 叫ばれたの初めてだったからちょっと面食らったけど。
 おい!それよりいまからイイトコ行こうぜ~!
 帝人~、懐中電灯ってどこにあるんだよー!早く探していこうぜ」
「え?何?これから出かけるの?」
「オイオイ、夜はこれからだろ~!お楽しみは夜wwって決まってんじゃん!」

ハイテンションな正臣とは対照的に寝起きで頭もあまり働いていない僕。
暫く探して見つけた懐中電灯を持って家を出た。

「オイ、すげぇよな。何にも見えねぇ。池袋じゃ有り得ないよな、こんなの。
 つか、もう道なのか何なのかもわかんねぇし・・・・・・」

相変わらずの口数に昼寝して充電できたことを確認する。
そう安心しながらも、正臣の言った通りにきちんと道を通っているのかよくわからず、
足元を照らしながらそればかりに集中して、正臣の後を追っていった。
坂のような丘みたいな所を上って、正臣はまだまだ歩く。
いったいどこに連れて行かれるんだろ、僕…。
心配しながらも、慎重について行くしかない。

そして漸く正臣の足が止まって、どうやら目的地に到着みたいだった。

「帝人!いいか!俺がいいって言うまで目ぇ開けるんじゃないぞ!」
そう宣言した正臣は僕の持っていた懐中電灯を取り上げ、
おまけにご丁寧に手で目隠しをして僕を座らせ、そのまま体を倒した。
ふわっと正臣の手の体温がなくなって「いいぞ」とお許しが出たので目を開ける。

目の前には綺麗な星空が広がっていた。

黙って空を見上げていると、何故か隣から正臣のがっかりした声が聞こえてきた。

「オマエさ、うわ~!とかキレイだねぇ!とか
 こんなステキな星空を見せてくれてありがとう!とか、そういう言葉は出ないわけ?
 普通だったら、こんなの見たらそういう言葉がフツーは出てくるもんだろ?!」
「………、あのさ、正臣。僕はさ、君と違ってついこの前までここに住んでたんだよ?
 勿論、目の前に広がってる星空、天の川を綺麗だって思うよ。
 でも、夏になれば雨の日以外はいつもいつも広がってたこの星空に
 今更感動の言葉を述べろって言われても無理があると思わない?」
「・・・・」

真っ暗であまり表情は見えないけれど、きっと複雑な表情をしてるんだろうって
想像できて僕はここでどうやって正臣を励ますべきなのかを考えた。

…………あ。

正臣との少し距離のあった体を横に移動させて、すぐそこにある正臣に手を握った。

「バッ!オマエ何するんだよ!」
「たまにはいいじゃないか。池袋っていう日常を離れてこうやって
 綺麗な星空見てるんだから手くらい繋ぎたくなるだろ?」
「・・・・」

そこからあんなに喋っていた正臣の口は閉ざされて、黙ったまま時が過ぎる。
う~ん、少しだけ?だいぶん?回復したみたいだけど、
このままこうしてるだけってそれだけってどうなんだろう?

「正臣?」
「なんだよ」
「このままじゃ芸がないと思わない?」
「え?なんだよそれ」

自然と暗闇に慣れた二人の目が合う。
正臣の表情が不思議顔から何かを確信した顔に変わっていくのが見て取れた。
どうやら読み取ってくれたみたいだ。

上を向いて「でも、ホントに綺麗だよね…」
そう言い終わったら、僕の視界から星空は消えた。






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ヌルくて本当にすみません。。。
旅行先(つか実家という名の避暑地)で天の川を見まして、
それはそれはキレイで口も開かずにずーっと見てました。
静臨で天の川はねぇだろ!と思った瞬間、正帝なら可愛いww
とモゲたのです、はい。
ほっこりしていただけて少しでも楽しんでいただければ幸いです。







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