美味しい珈琲をどうも有難うございました!
一息ついて頭をリフレッシュし、又日々精進してゆきます。

こちらは御礼画面第7弾です。よいこの童話シリーズ1、土金編です。

~つちだずきんちゃん~

 ある森の、それは小さな村につちだずきんちゃんという子供がいました。
 その子はちょっと無愛想で、身長も大分大きめでしたが、両親から愛情を一身に受け、とても心優しく活
発な子供に育っていきました。

 ある朝のこと、つちだずきんちゃんはお母さんから、森の奥に住むおばあちゃんが風邪で寝込んでいる
ので、食べ物を持ってお見舞いに行ってくれるよう頼まれました。つちだずきんちゃんが承知すると、お母
さんはつづけて、森の中は危険がいっぱいだから寄り道しないで真っ直ぐにおばあちゃんの家に向かうん
だよ、と忠告します。だけど、つちだずきんちゃんは、普段から森に出かけて竹刀をぶんぶん振り回してい
ましたから、森はすっかりおなじみの場所です。ですが、お母さんに心配はかけたくないので、つちだずき
んちゃんは寄り道をしないと約束しました。そうして、おばあちゃんのことが心配でしたから、すぐにでもお
見舞いに向かうことにしました。

 森の小道をどすどす……いや、てくてくと、どれ位歩いた頃でしょうか。大分森の中まで入ったところで、
木の陰からふさーっと青灰色っぽい毛が見えました。
 「ん?」と思ってつちだずきんちゃんは目を凝らしてみますが、よく見えません。じっと見ていると、今度は
そこからストールを頭からすっぽり被った人間の顔立ちをした生き物が顔だけ出してきました。目の辺り以
外はストールで覆われているのでよく分かりませんが、まつ毛が長く、ぱっちりとした目だけは分かります。
 「誰?」と訊ねてみるものの、相手は答えません。代わりに、魅惑的なウィンクを飛ばすと、白い手をだし
て、手招きをしてくるではありませんか。つちだずきんちゃんは一瞬迷いました。何故なら寄り道をしてはい
けないよ、とお母さんから言われていたからです。でも、ストールを被ったその生き物は、何だかキレイに見
えました。つちだずきんちゃんは、案外キレイなもの好きです。だから、寄り道をしちゃだめだと思いながらも、
何故か足が進みません。板ばさみになったつちだずきんちゃんは小さく唸りました。
 一方、迷いながらもなかなか近づいてこないつちだずきんちゃんに、業を煮やしたのか、その生き物は今
度は歌を歌い出しました。とても美しい歌声です。歌の歌詞は外国語のようでよくわかりませんでしたが、
つちだずきんちゃんはその声に聴き入りました。しかし、とても心地よい歌声に聴き入り過ぎて、うっかり睡
魔に襲われてうとうとし始めた頃、『この馬鹿』とどこからともなく刺刺しい声が聞こえてきました。その声に
ハッとして目を覚ましたつちだずきんちゃん、ふと気が付いたらその生き物の歌はいつの間にか終わってい
ました。
 「やっぱりダメだ。寄り道しちゃいかん」と我に返ったつちだずきんちゃんは、可愛いらしい子供のはずなの
に、意外にも野太い声をして、しかも親父のような話し方でしたが、その顔はもちろん、仏像のようにそれは
それは愛らしく……可愛いものでした……。あれ?何か、問題でも?
 もとい、そう思い直したつちだずきんちゃんはその生き物の居る方向を避けて、おばあちゃんの家へと急ぎ
ました。その背後から舌打ちするものがいましたが、つちだずきんちゃんはそれには気が付きませんでした。

 そうして、漸くおばあちゃんの家に辿り着いたつちだずきんちゃん。ノックをしてもおばあちゃんは病気で出
てくるはずがありませんから、つちだずきんちゃんは黙って家の中に入りました。するとおばあちゃんは布団
を被ってベッドに寝ていました。
 「食事を持ってきた。りんごと、ミルクと、バナナと、福神漬けと……」何だか童話に相応しくないアイテムも
入っていますが、それはもちろんつちだずきんちゃんセレクトです。
 バスケットから全てのアイテムを出したつちだずきんちゃんは、いよいよベッドに近づいて、「具合はどうだ」
と声をかけます。 『ごほ、ごほっ……』とせき込むおばあちゃん。つちだずきんちゃんは急いで布団の上から
その背中をさすってやります。案外細いな、と思いましたが、もしかしたらおばあちゃんは病気で痩せてしまっ
たのかもしれないので、とても気の毒に思ってそのことは口にしません。
 「ミルクを飲むか」つちだずきんちゃんがぶっきらぼうながらも精いっぱい優しい声色で声をかけます。すると、
おばあちゃんは黙ったまま、頷きました。
 つちだずきんちゃんは急いでミルクを持ってくると、「手を貸そう」と子供らしくないことを言って、布団を少し剥
ぎました。すると、何故かふさふさとした青灰色の毛束がベッドの端からはみ出ています。「これは?」思わず
つちだずきんちゃんがその毛束を手で握ってみると、びくんとおばあちゃんの肩が動き、それから明らかに無
理した裏声で『それは毛皮だよ。寒いからベッドの中に入れていたんだ』と言います。
 つちだずきんちゃんはとても純粋な子供なので、そうか、とすぐに納得しました。それからおばあちゃんを起こ
してみると、ほとんど目の辺りしかみえない位ぐるぐると巻いていたストールの頭の上の部分が、なぜか2つ、
三角に盛り上がっています。
 「じゃあ、これは?」つちだずきんちゃんはその不思議なものが気になったので、おばあちゃんに再び訊いて
みます。
 『最近のカチューシャは猫耳や狼耳がついているのが流行りなんだよ』
 確かにストールを被っているので、つちだずきんちゃんの声がよく聞こえるように、というセリフはおかしいの
でしょう。おばあちゃんは即座にすらすらと答えました。
 病気なのにお洒落するなんて、凄いな……つちだずきんちゃんはとても純粋な子供でしたから、その言葉も
すぐに信じました。
 「さあ、このミルクを」つちだずきんちゃんはおばあちゃんの背中を支え、もう一方の手でカップに入れたミルク
を口元まで運んであげました。すると、口を開けたおばあちゃんの歯の、丁度犬歯がきらりと光りました。
 「案外鋭い歯をしているな」と、つちだずきんちゃんは素直な疑問をぼそりとぶつけました。すると、おばあちゃ
んは『それはね……』と言いながら、とてもセクシーな視線を流してきました。
 それから、『お前をモノにするためだよ』
 そう言ってばさっと布団を蹴り上げると、つちだずきんちゃんをベッドに引っ張りこもうとして、こぼれるミルクも
何のその。その両腕を力いっぱい引っ張りました。
 ところが――つちだずきんちゃんはびくともしません。唖然としたおばあちゃんは、今度は腕を離してその肩と
頭を掴んで無理にでもひき倒そうとしましたが、「何をするっ」と一喝されて、逆にその筋肉質な両腕で押さえこ
まれてしまいました。

 『おいっ!つちだずきん!汚いじゃないか!ここで倒れないでいつ倒れるつもりだ!少しは原作を尊重したら
どうなんだ!』
 「何を訳のわからんことを……あ、貴様、毎週いたずらを仕掛けてくる”かね・ピー(恥ずかしい真似をさせる
な、との本人の希望により、名前は一部音声を消させていただいております)”狼ではないかっ」
 『……今頃気づくとは、さすがつちだずきん、鈍いな……』
 「それより、貴様またいたずらをしに来たのか!おばあちゃんはどうしたっ」
 『屋根裏部屋に寝かせたさ!そんなことはどうでもいいから、早くこっちに来い!』
 「断るっ。大体、毎週毎週よくそれだけいたずらを思いつくな……その知恵をもっと他に使ったらどうだ……」
 『何だ、年下のくせに生意気なことを!大体、森の中では俺の歌声に聴き惚れてたくせにっ!』
 「……!あれはお前だったのかっ」
 『……まさか……本気で今気付いたのか、つちだずきん……』
 「……(本気という名の、無言)」
 『もう、何でもいいからとりあえずキッス位させろ!』
 「そんな投げやりな頼み方があるかっ」
 『ほう、ならば言い方を変えればその気になるのか?』
 「まずは、何故俺としたいのかということから説明して欲しいんだが」
 『…………(つちだずきんちゃんのあまりの鈍感さに、大きな溜息)』

 ……あ、あれ?もしもし?赤い頭巾をかぶっている以外はオール土田のつちだずきんちゃん(子供役)?
おばあちゃんに全然化けきれていない、狼耳と狼の尻尾以外は全て”かね・ピー”の”かね・ピー”狼?
 ちょっと話が童話らしくなくなってきたので、ここで強制的に終了とさせていただきます。

 いずれにしろ、体育会系のつちだずきんちゃんは普段から鍛えているため、文学青年の”かね・ピー”狼に
食べられずに済んだようで……、どうやら狼は毎週あの手この手でつちだずきんちゃんをモノにしようと頑張っ
ているのに、いつも失敗しているようです。むしろ、狼の方が可哀そうなんじゃないかと思う心優しい皆さま、
ご安心下さい。いつか、かならずつちだずきんちゃんにも”かね・ピー”狼の切ない恋心が伝わるはずです。
だって、そういう運命の2人なのですから。ね?めでたしめでたし……なのか?

ジ・エンド



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