「愛故に」 「あ、猫」 日曜日の夕方、散歩中、隣を歩いていた都筑が不意に声を上げた。 視線を追えば、同じ柄の大小がやや遠くに。 おいでおいで、としゃがみこんだ都筑が手招く。 大きなほうはじとりとこちらを睨んでから、小さいほうを咥えてそそくさと。 ああ残念、と都筑は笑う。 「野良猫って、子育てしてるところを見られると子猫を食べちゃうんだって」 知ってた?とその笑顔のまま。 普段は悲しがるくせに、時折そういうことを、当然の事象のように。 「そんなならとっくの昔に野良猫なんざ消えてる」 努めて普段通りに切り捨てれば、都筑は安心したように笑う。 そういうところがたまらなく嫌いだ。 次に会えたら、写真でも撮ろうと。 残酷なことを宣う口で、嘘のない慈愛に満ちているのが。 そんなものに救われてしまう自分自身が。 拍手ありがとうございました!!! |
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