□brrow boy□
 呼ばれた、振り返った。違う。それは言葉以前の、声とも言えないものだったけど。
 じぃ、と見つめる瞳。半分空いた唇。小さな小さな手が精一杯伸びて 差し出される。紅葉に似た掌に、何かが乗っている。それを視ようとした瞬間、盲たような感覚に陥る。何かある、のに。見えない。
 掌の肌色がそれに近づくにつれて曖昧にぼやけ、いよいよその間際ではそれと融合してしまったかの様。

 懇願。−−取って取ってこれを取って。対価を頂戴?

 私は知っている。石榴は魂を黄泉へ繋ぐ甘やかな鎖だった様に、それは私をここから引き剥がしてしまうのでしょう?盲目に、全てと混ざってぐちゃぐちゃになりたい欲望。混沌を望む。
 だから私はあがらい難い引力からむりに目を逸らす。いつか、きっと、耐えられなくなる日が来ることを予感しながら。

(borrow boy …… 大道行商人、物売り)



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