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あなたのため


 くるるるん、とまわる。

 ふわわわん、とスカートが広がる。

「パステル! 見て! …どーお?」

 ちょっとだけ恥ずかしそうにしながら、わたしのほうにスカートのすそを広げて見せる。

 ピンク色のほっぺた。

 きらきら輝くブルーアイ。

 笑みを隠せていないくちもと。



 見てるよ。

 いつもあなたのことを見てる。



「よく似合うわ、ルーミィ!」






 何度も何度も、この子に服を作ってあげた。

 少しずつ少しずつ、彼女の背はのびている。

 貧乏パーティだったころの服を今とり出して見たら、きっと小さくてびっくりするんだろうな。



 今回のはシンプルなサマードレス。

 丈夫だけれど薄い生地の色は、夏らしく涼しげな色。彼女のシルバーブロンドにもよく似合う。

 半袖なんだけど、肩のあたりがフワッとしていて、かわいいんだよー。

 この辺、服作り技術の向上が見られるかなっ。

 スカートの下からは透けるような白さの、だけどおてんばそうな膝がのぞく。



 自画自賛といわれてもいい。似合ってる。よくできた。

 そして親バカ(?)といわれてもいい。この子は…

 世界一かわいい。



 ――けど。ちょっと大変なところも。






「ルーミィ、どこ行くの?」

「お外で遊んでくるよ。シロちゃんが公園で待ってるから」

 そういや、二人一緒に出かけようとしたとこを、ルーミィだけ引き止めたんだっけ。試着させるために。

「その服、着てくの?」

「うん! シロちゃんに見せるんだよ!」

 そういってにこりと笑う顔のまわりには、音符がいくつか飛んでそう。

 どうやら上機嫌。

 …気にいってくれたみたいね。

 これでしばらくは……。

「じゃ、気をつけて行ってくるのよ」

「はーい。夕飯までには帰ってくるよ。いっぱい作っといてね!」

「…はいはい」

 まったく、この子のおなかぺっこぺこ病はいつになっても治らない。

「マトマを使った料理、食べたいなぁ。いま旬でしょ?」

「…考えとくわ」

「いつもいってるけど、トンジャン入れないでね?」

「…うん」

「あとね。トラップのとルーミィのを平等に盛りつけるようにしてね?」

「ルーミィ、シロちゃんが待ってるよ?」

「あ、そうだった!」

 ぺろりと舌を出して扉に駆けよるルーミィ。

 その後ろ姿を見て、わたしはこっそりとため息を一つ。

「それからねー」

 ノブに手をかけたところでくるりとふり返るルーミィ。

 まだ何かっっ!?

「ルーミィ、次のお洋服は、赤いスカートがいいなあ」

 ……きた。

「あとね、この服に似合うお靴もほしいんだ」

 きたきたーっ!



 これだから、ちょっぴり大変な子。

 食欲旺盛なだけじゃなくって。注文が多い。

 たぶんね。わたしたち、大事に育てすぎたから。

 ちょーっとだけ、ワガママになっちゃったんじゃないかなあと。

 でも、ちょっとだけね?

 ぜったい無理なことは、ちゃんと話せば納得して諦めてくれるしね?



「それじゃ、いってきまーす!!」

 だけど扉をひらいて出ていってくれた時には、思わずまたため息が出てしまった。

「あ、いい忘れたっ」

 戸のすき間からひょこりと顔だけ出すルーミィ。

 ままま、まだ何かぁっっ!?

「あのね。お洋服ありがとう、パステル!」



 ――その声の愛らしさ、まばゆさといったら!



 単純といわれてもいい。

 やっぱりこの笑顔。この子。

 世界一、かわいい!!



「いいのよ、ルーミィ。わたしも作るの楽しいから」

「そお? じゃ、今度こそ行ってきます」

「いってらっしゃい」

「お家でトラップとごゆっくり」

「な……ルーミィ!」

 真っ赤になって叫んでやったときには、彼女はもう頭をひっこめていた。

 まったく、どこであんなセリフ覚えてきたんだろぉー!?

 ちょっと息が荒くなっちゃったじゃないの。

 深呼吸をして気を落ち着ける。



 …ほんとに、なぁんて子だろ。



 とてもかなわない。



 またノルに服の作り方を教えてもらわなきゃな、と思いながら、わたしも扉をひらいて部屋を出た。

 歩く廊下はみすず旅館のようにきしむことはない。





 時がたった。

 ルーミィの背ものびた。

 わたしたちも、わたしたちのまわりも変わった。

 それでも、当然のようにそばにいてくれる彼女の存在が。

 存在してくれているだけで、やっぱりうれしい。



 見てるよ。

 いつもあなたのことを見てる。





 揺れるスカートのすそを思いかえして、今度のは刺繍も入れてみようか、なんて考えてみる。

 時間の許すかぎり、手のこんだものを作りたいのよね。

 かわいいあなたのためだもの。







 そして、わたしはちがう扉の中へと入った。

 ベッドの上でごろごろしている人物がひとり。こっちに気づかないふりをしているらしい。

 わたしは彼に近づいて、ささやきかけた。



「マトマをとってきて」



 すると彼はとてつもなく嫌そぉぉぉに、眉をひそめたのだった。






某Cさんがスケッチブックに描いてくださった可愛いルーミィの絵をもとに書いたもの。

わたしのルーミィ未来予想図はこんな感じなんですが…さてどうなるやら。

ベッドでゴロゴロしてる人物の存在感は完璧ルーミィ以下ですね。にっこり。







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