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三國無双/馬岱







「……ん、どうしたの?」



普段はあまり自分から触れてこない彼女が、俺の服をそっと握った。
そう思ったらすぐに離れてしまった。
何か伝えたかったみたいだけれど、それが言葉になることはなかった。

遠慮がちなその態度に思わず頬が綻ぶ。



「そんな心配そうな顔しないでよ。
大丈夫。今日が二人にとって大切な日だってちゃんと覚えてるよ」



そう、今日は二人にとってとても大切な日。
だから、彼女を驚かせたい。
そして喜んで欲しい。



「でも……ごめんね」



彼女の方を向き、瞳を見つめた。



「俺から何か贈りたかったんだけど。
何も用意出来なくてさ」



そう伝えると彼女は微笑みながら首を横に振った。
何もいらないなんて、言いながら。



―そういうところも本当に好きだなぁ……



今日本当にしてあげたいことを隠しながら、彼女と向き合う。



「……だから、はい!」



彼女に向かって微笑みかけながら両手を広げた。



「あれ、なんで来てくれないの?」



少し驚いた様子で、どうしたのと問いかけられた。



「いや、どうしたのじゃなくて。
おいでって。ほら、抱きしめてあげる!」



それでも彼女の方からは中々来てくれない。
ちょっと予定とは違うけど。
俺の方から彼女を抱きしめた。



「俺からの温もりを贈るよー!」



くすぐったい。
腕の中で彼女が笑う。
釣られて俺も笑っていた。



「……なんて」



それだけじゃないから。



「冗談だよ」



そう言いながら隠し持っていた小さな包みを取り出した。



「本当に渡したいのはこっち」



彼女に似合うと思ったもの。
彼女に喜んで欲しくて選んだもの。



「受け取ってくれる?」



ためらいがちに伸ばされた手に俺からの贈り物を渡した。
それを見た時に彼女が見せてくれた笑顔が、とても眩しい。



「隠しててごめんね」



そう、俺が一番見たかったもの。



―きみの笑顔



それが俺にとっては何よりもの贈り物。



「ただ抱きしめたかっただけっていうのもあるけど。
驚いて欲しかったんだ」



貰うばかりではなく何か返したいと言ってくれるのも嬉しいけれど
そんなもの、俺は望んでない。



「お返し?
良いよ、そんなの気にしなくて」



欲しいものはただひとつ。
この腕の中にある。



「もう貰ってるからね!」



きみがこの腕の中で笑顔を見せてくれる。








それだけで良い



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