拍手ありがとうございます! ・戦国サナダテ 「…寒い」 そう言って政宗は幸村の背にしがみついた。ぎゅう、そんな擬音の似合いそうな様子で抱きつく政宗の手の冷たさに驚きながらも破顔した幸村は、腹の前にまわされた手を握り締めた。 「こうすれば、少しは暖かいでしょうか」 背中にぺったりとくっつく政宗は綿入れの着物に丹前を羽織っているのだが、それでも寒い、寒いと言ってすりよる姿がかわいらしくていとおしくて、幸村は頬を緩める。 「…まだ、寒い」 ぐりぐりと頭や頬を背にすりつけながら政宗が文句を言う。素直じゃない政宗の猫のような甘え方が、愛おしくてたまらない。 「では」 腕を引き寄せ身体を反転させ、すばやく膝の上に抱き上げ、ぎゅうと腕の中に閉じ込める。 「これなら如何でしょうか」 間近でのぞきこんでちゅ、と左の目元に口付ける。うっすらと赤く染まった顔をかくすように、今度は胸のあたりに頬をよせるものの髪の間からのぞく耳が寒さのばかりではなく赤くなっている。 「さっきよりは、マシだ」 そう言ってもぞもぞと居心地のいい場所を探し、ついでに幸村の着物と羽織の間に手を差し込んで背に腕を回す。 「…あったかい」 力を抜いて全身を預け、政宗が小さく笑う。その小さな笑みが愛しくて、ただ愛しくて。 (夏は暑いと怒られるこの体温も、冬には良いものだ) 幸村も微笑んで政宗を抱きしめた。 外はしんしんと冴え渡る奥州の冬。 けれど傍らには愛しき者の柔らかな体温と規則正しき胸の鼓動。 (何と、いとおしきこの時よ) ただよりそうことのこの幸福よ。 二人共にいられるのならばこの冬の何と幸福なことか! |
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