それはある日の出来事。


「なぁ、佐夷」
「何?」
「今度・・・その・・友達が誕生日なんだけど・・」
「それで?」
「そいつ女だから、何プレゼントしていいか分からなくて・・。佐夷に見てもらいたいんだ。
一緒にプレゼント選び付き合ってくれないか?」
「いいよ。」
「やったー久々のデ――」
佐夷は一夜の口を押さえた。
一夜がきまり悪そうな顔をする。

「そういうことを言うのはよせ。誰が聞いてるか分からないし。」
「そうだったな。ごめん。」
「さっさと買い物行って終わらせるぞ。行くか。」
「おう。」

そう言うと、二人は外へ出た。




「ちょっと琴子、今の聞いた!?」
「え?何のことでしょう」
「い〜ち〜や〜とさいのか・い・わ!」
真莉はとても興奮した様子だった。

「あぁ、それなら聞いてましたけど・・どうかしたんですか?」
「あの二人、絶対怪しい!!」
「・・・は?」
「あぁ見せかけて実はデートなのよデート!!さっき一夜も言いかけたし。」
「は、はぁ・・。」

もはや真莉の超越した考えに、さすがの琴子もついていけなかった。

「よし、琴子!こうなったら後をつけるわよ!!」
(佐夷なんかに一夜は渡せないわ!)

「えっ ちょっと・・真莉さん手が痛い痛い!!!」


※Perはお昼寝中です。





「ここからは実況は私、真莉,解説は琴子でお送りします。」
「真莉さん・・それ誰に言ってるんですか?」
「いいのいいの!!お、早速ジュエリーショップに入っていきましたね。」
「やはり女性にプレゼントするのはジュエリー系が一番効きますからねぇ。」

(あっ・・もう私、真莉さんのペースに順応してる・・)



「何を見てるのかしら・・おっと!一夜はネックレスに興味津々だ!!
それを佐夷に・・合わせている!!の佐夷の首に試しにつけて合わせている!!」
「まぁ・・佐夷くんは元々女の子みたいな顔してるから、
丁度いいモデルとして合わせているだけなのでは?」
「そうとも限らないわよ。“友達のプレゼント”と言っておきながら佐夷へのプレゼントかもしれないし。」
「はぁ・・・。」


「次は・・指輪に興味津々の一夜!!」
「指輪を送るとなると、一夜さんはその友達にかなり好意を持っていることになりますね。」
「あっ またしても佐夷をモデルとしている!二人の手と手が触れ合いまくってます!!
あの二人の関係・・やっぱり怪しすぎますね。」
「ま、まぁそうですね・・」




「お客様、本当に何をお召しになってもお似合いになりますね!
婚約指輪ならこちらになります。」
「い、いや・・俺たちはそういう仲じゃ・・・」
「一夜」

佐夷はキッと一夜を睨んだ。


「あ、そういうのはもっと先になってから買います・・・」




「げっ これ7万もするの!?俺の貯金じゃ到底買えない・・」
「だからジュエリー系はやめろって言ったじゃないか。次行くぞ。」



「ジュエリー系はさすがに高くて買えなかったのか!?一夜と佐夷、店から出てきました。」
「ジュエリーは可愛いもの程、高いですからねぇ」



「次は・・ヘアーアクセサリーの店へと入っていきました!」
「ジュエリーの次に女性うけするような物と言ったらヘアーアクセサリーなのかもしれませんね。」
「出入り口が小さいので、中で二人が何をやっているか分かりません。」



「この髪飾りとかどうよ?」
「こういう色は私服に合わせるのが大変だな。むしろこっちの色の方が・・・」
「あぁ、いい感じ。じゃあそれにするか。」



「おっ 二人とも、店を出てきました。一夜の手にはプレゼント用に包装されている箱を持っています!
それを鞄に入れました!」
「あっという間にプレゼントは決まったようですね。ここで二人はもう帰るのでしょうか。」



「俺帽子が欲しい。一夜買って。」
「えぇ〜〜〜!?俺が買うの?佐夷だって貯金あるだろ。」
「今は金持ってない。」
「『あたし帽子が欲しいです。一夜くん買って下さい。』って言ったら買うよ。」
「・・・あたし帽子が欲しいから一夜買って。」
「よくできました〜〜!!」



「む!なんか知らんけど、一夜が佐夷の頭を撫でている!?」
「一夜さん嬉しそうですね。」
「次は・・帽子が沢山ある店に入っていったわね。帽子専門店かしら。」
「たぶん佐夷くんが欲しいんじゃないでしょうか。そしてそれを一夜さんに買わせるとか・・・」
「成る程!!琴子頭いい!!」



「どんな帽子が欲しいんだ?」
「ん〜〜今の季節暑いから、涼しい帽子がいいな。これとか。」
「じゃあそれに決て―――」
「あとこれ。これと、これも。・・あれなんかもいいなぁ・・。」
「ちょっと待て佐夷!!さっきプレゼント買ったから、俺そんなに金持ってないぞ」
「チッ・・じゃあこの二つで我慢する。」
「(舌打ちかよ・・)じゃあこれで決まりだな。」


「ていうか・・さっきから真莉と琴子が俺たちの後をつけてるんだけど」
「マジ!!?俺、全っ然気づかなかった。」
「エージェントのくせに駄目だな一夜は。あいつらを後ろから脅かしてやろうぜ」
「さんせー」



「帽子屋から出てきた!やっぱり佐夷が欲しかった物みたい。」
「佐夷くんは早速帽子を被ってご機嫌な様子ですね。」
「悔しいけど、その辺の女より笑顔が可愛いわ」
「あれ?なんかいなくなってますけど・・・」
「えっ!? 本当だ。いないわ。」
「私達、一夜さんと佐夷くんの後をつけるのに夢中だったから帰り道分からないですよ?
どうします?」



「ほら 真莉、琴子。帰るぞ。」

突然背後から聞き慣れた声がする。
声の主はやはり佐夷だった。

「佐夷・・!! と一夜」
「ちょこちょこと俺達の後をつけてきて、一体何を調べてるんだ。」
「そ、それは・・・別に・・なんとなくよ。」

「そうだ。俺、真莉にプレゼントがあるんだ。」
そう言うと一夜は鞄から小さい箱を取り出した。


「真莉。誕生日おめでとう。」

「覚えてくれてたの・・!?」


「これ・・気に入るかどうか分からないけど、よかったら使ってくれ。」
一夜から差し出されたのは、ジャスミンの簪だった。

「真莉の『莉』はジャスミンだろ。だから・・と思ったんだけど。」
「ありがとう一夜。すごい可愛い。」
「佐夷が選んでくれたんだぜ。だから佐夷に感謝してくれ。」
「ありがとう佐夷。大事にする。」
「お・・おぅ。」

佐夷は照れ隠しで後ろを向いてしまった。
琴子は半分羨ましそうにジャスミンの簪を見ていた。


「じゃあ帰るぞ。・・ってPerはいないのか?」
「Perはお昼寝中。あ、でももう起きたかしら。そうしたら早く帰らなくちゃ!」
「急ぐぞ!!」



++++


その頃のPerはというと・・・



「マリ〜 コトコ〜 誰もいない・・・。二度寝しよう。」


二度寝をしていた。









拍手ありがとうございます!
この話は会話だけでどこまで表現できるか、と挑戦してみたものです。
この話での真莉と琴子は、私にとってツッコミ(琴子)とボケ(真莉)みたいな感覚で書いてみました。
よかったらコメントも下さると嬉しいです。
小説は全部で3種類あります。




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