『ラッキーカラー』  <ギン+日>


「隊長…そんな筆持ってましたっけ?あの筆お気に入りじゃなかったんですか?」

乱菊がお茶を日番谷の机に置いた時、その質問は放たれた。
噂のその筆は持つところが銀色の美しい筆だ。

「俺のじゃなくて雛森の。」
「桃の?」

日番谷によると今日の朝に桃が持ってきたらしい。
なんでも今日の日番谷は占いによると最悪な日になるらしく、せめてもの救いはラッキーカラーとして『銀』だそうだ。
占いやまじないを真剣に信じる桃にとってこれは一大事で、早速自分が持っている『銀』のものを掻き集めて持ってきたと言うことだ。
占いやまじないを全く信じない日番谷にとってはいくら桃でも有り難迷惑なわけで、乱菊に全てを伝え終わってから深く大きな溜め息を1つ零した。

「へぇ…。で、筆も硯も銀色なわけですね。…にしてもそう言う割りにはちゃんと使ってるんですね。さっすが隊長。」

それとも桃だから?とにんまりした顔で付け加える乱菊に日番谷は馬鹿野郎と呆れた顔で軽く睨み付けた。
でもまぁ…乱菊の言葉に対して否定をすることはできないのだが。
日番谷はつくづく桃が唯一の自分の弱みだと実感してやまない。

「…で。今日はほんとに悪いことは起こってないんですか?」
「まぁな。」
「じゃあ存外その必勝アイテム達も役にたってるんじゃないですか?」
「…必勝って。」
「悪い運勢に勝たなくちゃいけないでしょ?」
「…。」

どうしてこうも女って生きものは占いなんかを真に受けるのか。
桃の気持ちに感謝しながらも正直、乱菊が言う“必勝アイテム”がなかったとしても別に何も起こらないだろうと考えている日番谷にとってはやはり溜め息がでるばかり。

「あ〜またやっちまった!!」
「どうしたんですか?」
「〜!!いつもの筆じゃねぇから調子でねぇ。」

日番谷は今書いていた紙をくしゃっと丸めてお構いなしに机のまわりにぽいっと捨てた。
気付けば彼のまわりには包められた紙がいくつも無造作に捨てられている。

「…松本、その筆取ってくれ。」
日番谷は自分の場所より少し離れた位置に置かれた筆を指差した。
日頃彼が使っている筆だ。
耐えきれなくなり、自分の筆を使うことにしたらしい。

「こっち使っちゃうんですか?」
「仕事が進まねぇんじゃもとも子もねぇだろ。」

乱菊は本当にいいんですかー…?などと言いながら渋々日番谷に筆をわたした。
占いを信じていない日番谷にとってはそんなのは全く気にならない。
だからこの先に不幸…と言うかめんどくさいことと言うか。
そんなことが起ころうなんて微塵も思っていないのだろう。
日番谷に占いの結果を確実にするものが刻々と近づいているなんて。

「何か起こってもしりませんよ。」
「もう大丈夫だろ。それに第一俺はそんなの信じてな…」

ガラッ

「十番隊長さ〜〜ん!!」
「げっ…!!」
「…馬鹿。」

日番谷はこれでもかとばかりに厭そうな顔を見せ、乱菊もこの上ない程に呆れた顔をし、そして大きな溜め息をついた。
そんな2人にお構いなしに細目の男だけはただ1人にこにこと笑顔を振りまいている。

「何しにきやがった!!」
「そないな言い方せんでもー…。乱菊も溜め息なんかついとらんと。」

日番谷と乱菊は2人で目配せをし、もう一度溜め息をついた。

「十番隊長さんのラッキーカラー知ってる?さっきうちの隊の女の子らが獅子座は最悪な1日やー言うてたんやけど…『銀』があればいい言うてて、ボクの出番やなぁ思て飛び出してきてん。」
「…どこがてめぇの出番なんだよ。」

まさかてめぇまで“必勝アイテム”持ってきたんじゃねぇだろうなぁ…と冗談半分で問うてみるが、そんなわけでもないらしい。
ギンはなんのこと?と首を傾げてみせた。

「何も持ってきてないけど…ボクがいるやん。『ギン』が♪」

日番谷はぞっと背筋にいやな空気が走るのを感じた。
そして次の瞬間には既にギンに後ろからがばっと抱きつかれていた。

「馬鹿!!くっつくな!!てめぇじゃなくて『銀』だよ!!『銀』!!」
「でもどっちも『ぎん』にはかわりないやろ〜?」

日番谷はじたばたとあがいて見せるがギンの方が幾分も大きい。
逃げるに逃げられない。
そんな姿を乱菊は哀れそうな目で見つめ、そして一言。

「…隊長が途中で“必勝アイテム”使うのやめちゃうから。」
「どっちにしてもラッキーカラーは『ぎん』じゃねぇじゃねぇか!!」
「十番隊長さんのラッキーカラーはこのボクやろ!?」

日番谷は乱菊を、そしてギンを、最後に桃からの必勝アイテムをきっと睨み付けこれからもずっと占いは信じないと固く心に誓ったのだった。
END

なんでこうも拍手用の小説はふざけちゃうんだろう…;
ほんと駄文だなー…^^;

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