【伸び（小話）】
知らなかった。
「へえ〜、意外に純情なんだ」
知らなかったよ。
シマにそんなに想われてるひとがいるなんて。
「・・・うらやましいなぁ。」
シマがそんなに想ってるひとがいたなんて・・・。
「何がや？」
「へ！？あたし今しゃべってた？」
「おー、はっきりな、で、何がうらやましいんや？」
「・・・そんなに想えるひとがいるなんて！です。」
「うっさいわ、・・・そういうお前の方こそ好きなオトコのひとりやふたりもいないんか？」
「・・失礼な！いますよ、ひとりや二人くらい」
ていうかいるけど失恋決定だ。
「！好きなやつおんのか・・・？」
「？・・・ってまたまた失礼な！あたしに好きな人いちゃ駄目なんですかー？」
それからなぜかシマは押し黙る。
いつもだったら「お前にほれられる男に同情するわ」とか平気でいいそうな感じなのに。
その場の空気に耐えられなくなったあたしは上辺だけは元気に伸びをする。
「よーしわかった。シマの片思いが叶うように協力するからさ、お互いガンバロウよ！」
いっそ清清しく自分が失恋したことを味わうのもいいのかもしれない。
なんてよくわからないことを思っていってしまった言葉に落ち込んで下を見た。
あー、あたし、馬鹿だ。
「ムリヤ」
「ムリヤ？」
逆光になっているからシマの表情はよく見えないけど。
協力してやるというのになんで変なうめき声のような言葉をだすのか。
首をかしげつつ、自然に見えるよう笑いを含めて聞き返す。
「・・・正直、お前にがんばられると困るんやけどなー。協力できへんし」
「うわっ、ひっど！あたしの恋の応援はなしですか」」
私なんか協力するほど仲良くないと思われてたのか、となんかいじけた気分になってきた。
「ひどいのはどっちだ。オレの好きなんお前だし。協力できるわけないやろ」
そういってあたしの額にコツンと拳固をはりニカッとサラッと笑う。
「いったいなぁ・・・・・・って・・・・・え！！！？？？」
痛くもないけど、いつものようなノリで返してたら、今、骨を伝って
聞こえてきた言葉を理解しきれなかったでした。（なんで敬語？）
「だーかーらー、オレの好きなオンナ、目の前におるんやけど。」
今度は、ゆっくりとはっきりくっきり、聞き間違いないようにあたしに
指までさしてきて、シマはそう、のたまった。
「お前、今の内覚悟しとけ？」
オレの本気はものすごいで？とカラカラ笑って、なんや言ってさっぱりしたわ、
なんていいながら、さっきのあたしと同じように伸びをした。