気まぐれ
最低限の荷物とこの時のためにずっと貯めていたお金を持って 今日、青年は生まれ育ったこの村を旅立つ。 大切な少女に会うために。 【空に描いた僕等の物語〜青年期〜】 「行って来る。」 少し肌寒い明け方。 自身の家の前で、俺は見送りに出てきてくれた 家族と桃の婆ちゃんにそう言った。 親父達は俺が何のために江戸に行くか知っているからか ずーっとニコニコ顔。 正直……なんかムカツク。 桃の婆ちゃんだけが「気をつけてね。」と優しい言葉をかけてくれる。 ありがとう婆ちゃん。 親父達の暖かい声援を背中に俺は村の出入り口へと歩き出す。 そこにはチャドの親父さんが待ってくれてる。 親父達に挨拶なんてしてたからけっこう待たせてる筈だ。 早く行かないと………。 「よう、冬獅郎。」 「遅かったな冬獅郎。」 「待ちくたびれたよー。」 「井上さんに同じ。」 「早くしろよ冬獅郎。」 「………ムッ。」 村の出入り口の直前で俺は 持っていた荷物を落としてしまうほどの衝撃を受ける。 なんとそこにはいつものメンバーが 俺と同じように荷物を抱えて笑顔で出迎えたからだ。 何事だ? 「お前達…なんで?」 「なんでって俺たちも行くからに決まってるだろ?」 「何をとぼけたことを言っておるのだ。」 この言葉にその場に居た全員(冬獅郎以外)はうんうんと頷く。 さも当り前のように言う一護達に俺の頭は真っ白になった。 いやいやいやいやいや待て。 行くってなんだ? そんな話は何一つ聞いてないぞ? というか意味がわからねぇ。 「さぁ、行こう!冬獅郎君。」 「早く行かないと着くのが遅くなるぞー。」 「行こう行こう。」と言いながら 今だ頭が真っ白な俺の背中を皆は押し 俺は何も整理できていないまま荷車に乗るはめになる。 こうして一人の恋する少年+六人の友は江戸へと旅立ったのであった。 ―END―
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