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1.呼ぶ声は遥か遠く ルクガイ


「がーい、なあ、ガイったら…!」

肩を揺さぶられて目を覚ます。
見慣れたファブレ邸の自室…ではなくて。此処は雪国。ケテルブルクの宿屋。

「どうした、ルーク」

眠りから呼び起こした声の主はルークだった。
満面の笑みで、しかも何か言いたげだがなかなか言おうとしない。

「あの、あのな!俺、ガイに見せたいものがあるんだ!」

時刻は、夜の11時。
食事後、うとうとしていたのが本当に眠ってしまったようで、談話室に残っているのは自分だけだった。
なあなあ、と、未だぼんやりしているガイにルークは興奮した面持ちで捲くし立てる。
そういえば、ルークの髪が少しぬれている。

「外に、いたのか?こんな夜に」

風邪ひいたらどうするんだそんな薄着で、と小言を言おうとした矢先、先手を打つが勝ちと思ったのかルークがガイの腕を引っ張る。

「いいからいいから!こっち!」

「お、おいルーク!」

思ったとおり、その足取りは玄関、もとい、外へと向かっているようで。
ルークの手は、ひやりと冷たく、次第に自分の熱と混ざり合っていった。

外は、本当に寒かった。
わかりきっていたことだったが、夜になると更に冷え込んでいた。

たどり着いたのは、街の中央にある広場。
街頭が、白い雪をスポットライトのように照らしている。
その下に、小さな…。

「寝ぼすけさんを、連れてきたんですか」
「へへ、だって、ガイに見てほしかったんだ!」
「旦那まで、なんで」
「夜遊びには、保護者が必要ですから」
「止めさせろよ…」

小言を言うも、視線はその小さなものに釘付けで。

「ご主人様とジェイドさんの自信作ですの!」

ぴょこん、とミュウがジェイドのわきから顔を出す。


「そうですよ、ガイのために寒い思いをして作ったんですから、ありがたく受け取ってほしいものですね」
「なんでミュウを小脇に抱えてるんだよ」
「あったかいんです」
「ミュウも暖かいですの!」

それは小さな、雪ウサギだった。

「俺が小さいころ、つっても、9歳くらいだったか。雪降ったことあったじゃん」
「ああ…」

よく、覚えている。
珍しく、その年は雪が降った。



『なあ、がい、あれ、なあに?』

『あれは ゆき というものですよ』

『ゆき?』

『寒い寒い日にだけ、降るんです』

『ゆき…』

その頃のルークは、だいぶ言葉の覚えもよくなった頃で、新しいものに興味津々だった。
きらきらと目を輝かせて、部屋の中から、じっと雪が降り積もるのを見ていた。
ルークはそのとき丁度風邪が治りかけた頃で、外に出ることを禁止されていた。

『ゆき…』

触りたくて、仕方がないといった顔で。でも、だめだということもわかっているようで。
きっとルークの風邪が完全に治った頃には、ゆきはもうとけてなくなってしまっているだろう。
それどころか、明日の朝にも夢のようになくなってしまうかもしれない。

『ちょっと、待っていていただけますか。布団の中に入って、いい子にしてるんですよ?』

そう言って、自分は外に出る。
そして作ったのが、小さな雪ウサギだった。


「俺、ずっと、自分で雪ウサギ作ってみたかったんだ。でも作り方とかわかんねぇから、ジェイドに聞いた」
「私も実際、幼少の頃は作ったことなかったんですけどねぇ」

「これ、俺に?」
「そうだよ、ガイのために作ったんだ」

へへ、と照れくさそうに笑う。


『すごい!つめたいウサギだ!ガイ、すごい!』



その顔が、初めて雪ウサギを見た時のルークと重なった。

君のその笑顔を見れるから、
君のその声音を聞けるから、


いつまでも、君は愛しい君のまま。






『切望する五つのお題/詩的』
お題配布/くじらのゆりかご様



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