拍手ありがとうございました! 現在お礼小説は3篇です。 1.呼ぶ声は遥か遠く ルクガイ 「がーい、なあ、ガイったら…!」 肩を揺さぶられて目を覚ます。 見慣れたファブレ邸の自室…ではなくて。此処は雪国。ケテルブルクの宿屋。 「どうした、ルーク」 眠りから呼び起こした声の主はルークだった。 満面の笑みで、しかも何か言いたげだがなかなか言おうとしない。 「あの、あのな!俺、ガイに見せたいものがあるんだ!」 時刻は、夜の11時。 食事後、うとうとしていたのが本当に眠ってしまったようで、談話室に残っているのは自分だけだった。 なあなあ、と、未だぼんやりしているガイにルークは興奮した面持ちで捲くし立てる。 そういえば、ルークの髪が少しぬれている。 「外に、いたのか?こんな夜に」 風邪ひいたらどうするんだそんな薄着で、と小言を言おうとした矢先、先手を打つが勝ちと思ったのかルークがガイの腕を引っ張る。 「いいからいいから!こっち!」 「お、おいルーク!」 思ったとおり、その足取りは玄関、もとい、外へと向かっているようで。 ルークの手は、ひやりと冷たく、次第に自分の熱と混ざり合っていった。 外は、本当に寒かった。 わかりきっていたことだったが、夜になると更に冷え込んでいた。 たどり着いたのは、街の中央にある広場。 街頭が、白い雪をスポットライトのように照らしている。 その下に、小さな…。 「寝ぼすけさんを、連れてきたんですか」 「へへ、だって、ガイに見てほしかったんだ!」 「旦那まで、なんで」 「夜遊びには、保護者が必要ですから」 「止めさせろよ…」 小言を言うも、視線はその小さなものに釘付けで。 「ご主人様とジェイドさんの自信作ですの!」 ぴょこん、とミュウがジェイドのわきから顔を出す。 「そうですよ、ガイのために寒い思いをして作ったんですから、ありがたく受け取ってほしいものですね」 「なんでミュウを小脇に抱えてるんだよ」 「あったかいんです」 「ミュウも暖かいですの!」 それは小さな、雪ウサギだった。 「俺が小さいころ、つっても、9歳くらいだったか。雪降ったことあったじゃん」 「ああ…」 よく、覚えている。 珍しく、その年は雪が降った。 『なあ、がい、あれ、なあに?』 『あれは ゆき というものですよ』 『ゆき?』 『寒い寒い日にだけ、降るんです』 『ゆき…』 その頃のルークは、だいぶ言葉の覚えもよくなった頃で、新しいものに興味津々だった。 きらきらと目を輝かせて、部屋の中から、じっと雪が降り積もるのを見ていた。 ルークはそのとき丁度風邪が治りかけた頃で、外に出ることを禁止されていた。 『ゆき…』 触りたくて、仕方がないといった顔で。でも、だめだということもわかっているようで。 きっとルークの風邪が完全に治った頃には、ゆきはもうとけてなくなってしまっているだろう。 それどころか、明日の朝にも夢のようになくなってしまうかもしれない。 『ちょっと、待っていていただけますか。布団の中に入って、いい子にしてるんですよ?』 そう言って、自分は外に出る。 そして作ったのが、小さな雪ウサギだった。 「俺、ずっと、自分で雪ウサギ作ってみたかったんだ。でも作り方とかわかんねぇから、ジェイドに聞いた」 「私も実際、幼少の頃は作ったことなかったんですけどねぇ」 「これ、俺に?」 「そうだよ、ガイのために作ったんだ」 へへ、と照れくさそうに笑う。 『すごい!つめたいウサギだ!ガイ、すごい!』 その顔が、初めて雪ウサギを見た時のルークと重なった。 君のその笑顔を見れるから、 君のその声音を聞けるから、 いつまでも、君は愛しい君のまま。 『切望する五つのお題/詩的』 お題配布/くじらのゆりかご様 |
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