◆ライ→グラ
確かに恋だったより。



この痛みを何と呼ぶのか、俺は知らない





ちくり、としたのは指なのか心なのかそれが、問題だ。


「おとうさん大丈夫?」

指を包丁で軽く切ってしまった俺を心配してコーラルはすぐさま絆創膏を持って俺の元へ駆け寄ってきてくれた。零れるくらい大きな澄んだ双眸は不安そうに揺れている。相変わらず出来た息子(娘?)だ。

「そんなに血はでてねーよ。ありがとなコーラル。」

くしゃり、と怪我をしていない方の手で頭を撫でると安心したのか儚げに笑う。

「もう少しで出来るから待ってろな」

「うん、わかった」


素直に頷いて自分の席についてルシアンから借りたらしい本を読み始めた。途端に再び訪れる静寂。
俺の思考は再度自分の中の気持ちに整理をつける作業に引き戻される。なぜかモヤモヤする。胃のあたりがぞわぞわして落ち着かない。
兄貴がミントさんを好きなのは前々から知ってる。
ヘタレではあるが気のいい彼だ。町の人からの信頼も厚いのも知ってる。
そんな兄貴が本当の兄さんだったら良いのにと最近思う自分が嫌で兄貴に会いたくなかった。
あの笑顔をみるたび、あの声を聞くたびに独占したくなる。

ずきん、とまた痛んだ。
指ではなく、これは心が痛いんだと思った。

だけど、この痛みを何と呼ぶのか、俺は知らない 。






end

恋ってなにそれ?な、ライもいいと思います。というかライはそういうのに疎い感じしますよね。
日々の生活が充実し過ぎてそこまでマワラナイ感じ?がします。なんとなく。



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