拍手ありがとうございます! ついでにコメントなんかも頂けると嬉しいです。 現在拍手お礼文は3種です。 夏といったら花火である。そして今年一番の花火が見れるのは、今日の晩だ。 つまるところ、今日は大江戸花火大会、その当日なのであった。 屯所の連中もみんな、きたる本番に備えて酒やつまみを抱えて移動の真っ只中である。 勿論俺も準備万端で今夜を迎え、 「永倉ア…あんたは私を置いて行かないわよね」 布団の中でウンウン唸る沖田さんの介抱に追われているのであった。 夏風邪は馬鹿がひく 「なんでまた今日に限って熱出すんです」 外から遠く花火の音が響き始めてしばらく経って、ようやく沖田さんの体温は下降してきていた。 「私だって楽しみにしてたのよ」 「毎日夜中に薄着で出歩くから、こんなことになるんですよ」 年頃の女性が夜中に一人で外出するというのは非常に危険な行為だが、残念ながらその法則は彼女には適用されない。 故に屯所内の男子一同は彼女の夜の散歩に一切口出ししなかったし、気にも留めていなかったのだが、意外な方向でそれは間違いだったと分かった。 「暗闇で誰もあたしの格好なんか気にしないでしょう」 夏だといっても夜になると涼しい。 彼女が普段自室でしている格好で外を歩き回ったら、そりゃあ風邪にもかかるというものだ。 「永倉は夏の夜がどんなに気持ちいいものか分かってないのよ、まだまだ子供ねえ」 その結果が風邪引きならば、俺は一生分からなくてもいいと思う。 「ねえ永倉、あたしも花火見たいなア」 俺の運んだ麦茶を飲み干すと、沖田さんは拗ねたような顔をして俺を覗きこんだ。 「そんなの俺だって見たかったですよ」 「なに、あたしのせいだって言いたいの」 「そうじゃないんですか?」 じっと彼女の目を見つめると、ふふ、と笑いながら目を逸らされた。自覚はあるようでなによりだ。 「あ、そうだ」 急に沖田さんが立ち上がった。瞬間、フラっとよろけてしまう。 「そんな急に立っちゃだめじゃないですか、一応病人なんですから」 よいしょ、と肩を支えると、彼女は「あたしの部屋にいいものあったんだ」と笑った。 そして、部屋から帰ってきた彼女の両手に抱えられていたものは、 「線香花火ですね」 それにしても、よく線香花火だけこんなに沢山溜め込んだものである。 縁側に腰掛けて花火に火をつけると、ぱちぱちと小さく光が弾け始めた。 夜の庭は深く暗く、そして涼しく、遠くで提燈の灯りが揺れていた。 「どっちが長く保てるか勝負だから」 小さな花火の光に照らされた沖田さんの顔が、楽しそうに崩れた。 「夏風邪をひく人になんて負けませんよ」 馬鹿は馬鹿でも、こんな量の線香花火を溜め込んだあなたが、花火馬鹿じゃなければ、ですけど。 ありがとうございました。 コメントへのお返事は日記にて行っております。 |
|