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10、帰る道(薄桜鬼沖田×千鶴)
ぱらぱらと、細かい雨が降る。
朝から曇りがちだったから、もしかするととは思っていたけれど。昼間というのに薄暗い外をうかがって、千鶴は眉をひそめた。
この家のもうひとりの住人は、気まぐれにふらりと出ていったまま戻っていない。雨に濡れては身体に障るのに。
傘を片手に家を飛び出してほどなく、のんびりと歩いてくるひとを見つけた。
「総司さん」
呼びかけに、にこりと笑顔が向けられる。
いつもどおりの薄着で、雨など気にしないというふうに立ち止まる沖田に、千鶴は慌てて駆け寄った。傘をさしかける。
「迎えにきてくれたんだ」
「降り出す前に戻ってくださいねって言ったのに……」
「ごめんごめん」
からりと笑って傘をさらっていく手が、ひやりと冷たい。あまりの冷たさにぎょっとして、千鶴は咎めるように沖田を見上げた。
こんなに冷えてしまって。どうしてこのひとはもう少し自分の身体を気遣うということをしてくれないのだろう。
沖田は小さく肩をすくめる。
「君まで冷える前に、帰ろうか」
うながされて、歩き出す。ゆっくり千鶴にあわせる沖田について歩きながら、千鶴は傘を持つ手が濡れているのを見つめた。
ひとつの傘にふたりで入って、距離はいつもより近いくらいだけれど。あの手はなんて、冷たそうなんだろう。
千鶴は両手を伸ばして、傘をつかむ手を包み込むように触れた。
沖田が、声をこぼして笑う。
「歩きにくくないの?」
問われて、千鶴は小さく首を傾げた。少し、歩きにくい。もしかしてこれでは彼も歩きにくいだろうか。いい考えだと思ったのだけれど。
だったらせめてと、しがみつくように寄り添ってみる。
「あんまりかわらないと思うけど」
声に笑みを含ませて、沖田は千鶴を見下ろした。
「でも、あったかいね」
やさしく細められた瞳に、千鶴はふわりと微笑みを返した。
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