【ワンダーランド!】



『…あら?ここは…どこかしら…』
ふと目覚めると、森の中だった。
そこには何にもなくて、生い茂る草の匂いが立ち込めた。

後ろから、茂みがわさわさと忙しなく揺れる。

「ああ!!いそがしい!!!!」
ぴょん!と飛び出たものはルカさんだった。
『えぇ!!?ル、ルカさん!?どうしたのですか!!!?』

「おお、イシスの姫!女王様が開かれる宴に遅れてしまいますぞ!」
『う、宴?』

『でもルカさん?なんで、そんな格好をしているのですか?』

いつもの薄着の格好ではなく、今日は畏まったワイシャツに赤いナポレオンジャケット。
茶色の革靴に、ピシッとアイロンのかけられたパンツ。

「なにを仰っておりますか。いつも私めはこの格好でございます」

「それよりも、お早く!あ、私は先に宴に行って用意をしておりますので、お早く!」
「この先にラガシュ王がおりますが、道が分からなかったらお聞き下さいませ」

ルカは懐中時計を仕切りに開けたり閉めたり。
頭の上には、白く長い可愛らしいウサギの耳がキョロキョロとあっちへ向いたりこっちへ向いたり。

「では、お先に失礼いたします!」


満足な説明もなくルカは目の前から消える。
まるで、本物のウサギのように素早く。

『あ、待ってください!ここは、一体!?』
追いかけようと、駆け出す。
ルカが消えていった木の窪みの中は暗くどこまでも続いているように思える。

土のぬかるみで手が滑ってしまい、あえなく暗闇の中へ落ちてしまった。




長く長く落下したように感じる。
周りの本棚には瓶や写真立てなども置いてあったけど、何があったのかは覚えていない。

着地した先は広間のようになっている。

腰ほどの高さのテーブルが1脚。
『これは…なにかしら?』
テーブルの上には、小さい札のついた瓶と、金色に輝く細めの鍵。
瓶の中には半透明の液体。
赤にも、ピンクにも、青にも緑にも見える不思議な液体に首をかしげる。

『私を飲んで…?』


後ろを見ると小さな小さな扉があった。
腰を屈めても潜れなさそうなその大きさに、飲めばなにかできるのかと思い、瓶のフタを開けた。


喉に通すと、色のとおり不思議な感覚だった。
チェリーパイとオレンジジュース、チョコレートケーキにビーフステーキ、シーザーサラダにトマトスパゲッティの味がした。
後味のイチゴジャムを堪能しながら、瓶の中身を全て飲み干してしまった途端、視界ががくんと下がった。

地震かと思ったが、違う。

『ああ!!小さくなっているわ!!どういう事!?あの瓶を全て飲んでしまったから!!??』
テーブルの脚のパーツよりも小さくなってしまった体では、テーブルの上の鍵は回収できそうにない。

脚の下を見ると、今度は両手で抱えても大きいくらいのカップケーキがあった。
『今度はケーキ』
持ち上げると、皿にチョコペンで食べてと書いてあった。

今度はやり過ぎないように、ほんの1口かじる。

『きゃああ!!』
ずんずんと視界が上に上がっていく。
高速のエレベーターに乗っているようで、頭がぐらぐらするわ!



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