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※寮生ヒバツナパラレル続編
(・・・・・・一睡もできなかった)
気づけばあたりはほのかに明るくなりはじめている。
当たり前だ。あんなことがあって寝ていられるか。
(ど、どうしよう)
このままでは雲雀はいつもの様に綱吉を起こしにくるだろう。
けれどそれにまともな対応をできる自信なんて皆無だ。よし。
(逃げよう)
思った瞬間に決定事項だった。
だが5.5畳ほどしかない、机とベッドを置けば精一杯の部屋に、隠れる場所なんてない。
この時間では開寮時間にはまだ遠く、寮の外へ逃げることもままならなかった。
寮内の施設も同様に、就寝中の他の寮生のことを考慮して、時間がくるまで使用禁止である。
逃げられる場所なんてどこにもない。
そうなると残された手はただひとつ。
綱吉は人生最速、といっていい早さで着替え、登校するための鞄を用意し、
準備をすませると、そっと音をたてぬように戸を開けた。
「というわけでかくまってくれ!」
「どこがどういうわけなのか最初から最後まで懇切丁寧に説明して欲しいですがどちらにしろ嫌です今すぐ帰りなさい」
心底嫌そうな顔をして綱吉を追い出そうとする人物は、顔だけならやたらといい、
しかし何故か髪型が某南国果実に似ている綱吉の一つ上の友人である。
男子寮の寮長を務め、時折雲雀による色んな被害の後始末をしたり、時には一緒になって暴れて
とんでもないことをしでかしたりする微妙な人間だが、綱吉的に早朝から訪ねて迷惑かけてもいっかパイナップルだし!
と思っている唯一の人間だった。そう簡単に雲雀に負けないという点も重要だった。名は六道骸。
「ただでさえ僕はどこかの誰かさんに寮長なるものを押し付けられて忙しいんです。
疲れてるんです。寝たいんです。こんな朝っぱらから痴話喧嘩ごときで起こさないでください」
そうして迷惑そうな顔のまま、しっしっと犬を追い払う仕草をしてみせる。
「開寮時間まででいいから!オレこのまんまだとどうにかなっちゃうよ!」
「勝手になればいいじゃないですか。さっさと戻っておいしく喰われるなり
いちゃいちゃするなりなんなりええ勝手にやっててください彼の機嫌がよければ
まわりも色々楽ですし頑張ってくださいさようなら」
「だーっ、頼むってば!てか、く、くわっ……!?」
とんでもない台詞に綱吉の頬がカッ、と紅く染まる。おや、と骸は瞠目した。
「ああまだそこまでいってませんか。まあなんだかんだで彼、本気で風紀には煩いですからねぇ」
「何の話!?」
「煩いですよ綱吉くん。早朝からの騒音なんてまた僕に苦情がくるんですから静かにしてください」
そのままぴしゃりと戸を閉めようとするので、綱吉は身体ごとその隙間にすべりこませた。
「……」
「……」
その俊敏さを普段はどこへ置いてきたのだ。はぁああ、と骸は盛大な溜息をつくと、
ふっ、と色々諦めるようにうなだれる。
最近は行いもよいはずなのに、一体なんなのだこの仕打ちは。
昔の行いが悪すぎたのだろうか。今更少し後悔する。
綱吉はなんとか部屋にもぐりこむなり、部屋の隅にうずくまり膝に顔を埋めていて、
その耳ははっきりわかるほど紅い。時折奇声まであげる始末。
あまりの反応に、うっかり猫をも殺す例のアレがむくむくと湧き上がってきてしまった
骸が、これまたうっかり理由をきいてしまうまで後数十秒。
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